前夜祭で対局者が退出された後に加藤九段と豊川七段が本局の見どころを話しました。
加藤「これから少し、豊川さんと将棋の見所を、まあいろいろと話をしたいと思います。わたくしは福岡県の嘉麻市の出身なんですね。生まれたときは市ではなくて町でしたけれど、いまは嘉麻市になっております。小学校の4年生のときに、将棋の……そうだ! 新聞の将棋欄を見まして、醍醐味というものを子供ながらに悟りました。それがわたくしの将棋棋士としてのスタートです。以来、読売新聞社主催の九段戦、十段戦、竜王戦をずっと指し続けておりまして、ほぼだいたい60年近く、読売新聞社主催のですね、対局を続けています。わたくしはですね、名人にもなっていますけれども、読売新聞社主催の以前の十段戦で、三度、十段になっています、ハイ。大山名人・十段を負かし、中原名人・十段を負かし、それに米長永世棋聖を負かし、三度十段になっています。わたくしとしましても、もっとも多く獲得したタイトルですので、読売新聞社様とは、非常に息が合っていると思います。えー、それでですね……」
豊川「すみません。すみません。加藤先生」
加藤「ああ、こりゃ。豊川さんです。どうぞどうぞ」
豊川「すみません。加藤先生、1局目と2局目はどうだったでしょうか。渡辺竜王と森内名人の対局ですが」
加藤「はい、そうですね。1局目はですね、ニコニコ生放送の解説をしまして、ニコニコ生放送の解説は私がやったときに、にじゅうまんにん! の将棋ファンが見たそうです。内容はですね、ひとことでいえば大熱戦。第2局も同じ戦型になりまして、これは私も経験がありますけれど、七番勝負などのタイトル戦では自信と自信、研究と研究がぶつかりあいますので、よく出だしが同じ形になることが多いんですね。問題は明日、明日ですよ。森内名人の先手番なんですけれども、豊川さんも知っていると思いますけれども、森内名人は先手番が大好きなトップ棋士なんですよ。どうやったら振り駒で先手になるかと、家で1000回も振り駒をしたという、これ本当の話なんですよね。戦型としましては、森内名人はもしかしたら加藤流の矢倉をですね、可能性としてはやるかもしれません。えっとそれはまず、ななろくふ、はちよんのふ、ろっぱちぎん、さんよんふ、ななななぎん、ですね。これが加藤流の出だしです」
(書き起こし=烏)