2013年1月22日 (火)

第25期竜王就位式 2

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(競馬記者の片山良三さんの祝辞)
「私はいまから40年も前、昭和48年に花村(元司九段)門下として奨励会に入りました。その後、競馬ライターをやりながら、連盟野球部のバッターとしてしばらく棋界にいて、皆さんとはつながりの長い時代がありました。しばらくしてスポーツ紙の競馬記者になりまして、武豊騎手の19歳でG1優勝の取材して番記者として世界中の競馬場を回る幸運を得ました。そういうことがなければ、渡辺竜王との縁もなかったでしょう。
ご存じの通り、竜王は引退したら朝から晩まで競馬を考えるのが夢というくらいのめり込んでいらっしゃいます。竜王は年に1、2回私の住む栗東市にある栗東トレーニングセンターに馬を見にやってきてくれます。その前日に連盟に競馬部というのがあるんですが、その部長として部員を引き連れて阪神競馬場か京都競馬場でJRAの売り上げに貢献して、その日の夜に騎手や調教師、厩務員と食事をして、その後指導対局をしてとサービスしてくれます。翌日は早起きをして厩舎を回って、馬に触って本当に喜んでくれます。それくらい競馬が大好きです。
いつだったか、ある木曜日に竜王と酒を飲んだときのことです。JRAのメンバーは木曜の夕方に発表されるんですが、その日の夜にのうちにレースの形勢判断が竜王はすでに済んでいることが分かって驚いたことがあります。失礼を承知で、競馬と将棋のどちらに時間を割いていますかと聞いたら、リップサービスで『うーん、競馬かな』と。
渡辺竜王の将棋は合理的な将棋として評価されています。今日は調子が悪かったからこの手が見えなかったということも否定される。将棋は技術の勝負だということをおっしゃっています。この話を数人のジョッキーに話したんです。そしたら、去年の夏に福永祐一騎手が単身アメリカに遠征するときにかっこいいことを言ったんです。『調子のいいとか、悪いとか、流れがいいとか悪いとか、そういうことを言わせないくらいの絶対的な技術を身に付けて帰ってきます』と。それどこかで聞いたなと思っていたら、渡辺竜王の話をしたことを受け売りでしたんですね。それくらい竜王の生き方というのは騎手の間でも浸透しています。ジャイアンツのV9を超える10連覇を目指して頑張ってください。その語り部として競馬界に将棋の素晴らしさを伝えていきます」

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(棋友館の生徒から花束贈呈。渡辺竜王の竜王就位式では恒例。今年は9連覇で9人の生徒から花束が贈られた)
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(謝辞を述べる渡辺竜王)
「花束を毎年いただいておりまして、今年は持ちきれないくらいいただいて、これが9連覇の重みなのかなとあらためて実感しました。
今回の七番勝負は昨年に続いて丸山九段を挑戦者に迎えてということでしたが、昨年の秋には竜王戦の前に王座戦でタイトルを取られてしまい、落ち気味なムードの中で戦うのは初めてのことだったので、どういうものなのかなと自分でも不安を抱えながら竜王戦が始まりました。
第1局は天童の滝の湯さんでした。指し慣れた場所、指し慣れた竜王戦という舞台と最高峰の舞台の緊張感がいい方向に作用して、普段通りに指せたと思います。開幕から3連勝となったときは、このまま今年は案外簡単にいけてしまうのではないかという甘い期待を持ちましたが、第4局は完敗で。勝負は甘くないという、いままでの竜王戦でも痛い目にあったが、なかなか成長しません。
流れが変わってしまいそうな嫌な負け方だったが、それまでを振り返って、自力で完璧に勝った将棋はなかったかなという気もしました。第5局は自分できちんとした形で勝たないといけないと思い、対局に臨みました。
その第5局が行われた龍言は竜王戦ではなじみの場所です。ここは初めて竜王になった思い出の場所です。それから8年間。いまとなってみると非常に早かったですが、思い返してみると2度と経験したくないような厳しい勝負の連続だったと思い出しながら盤に向かっていました。第5局は七場勝負一番の熱戦という将棋で、最後の最後で勝ちになりました。思い返してみると、厳しい立場に立たされることは何度もありましたが、潜り抜けられた幸運に感謝して次に向かっていければと思っています。
来年は節目の数字にチャレンジしますが、ジャイアンツの9連覇と並んでいます。このまま9連覇で終わってしまうと皆さんに覚えてもらいやすいかなと思いますが、せっかくの機会ですからジャイアンツの記録を上回る10連覇を目指して、その暁には始球式でも声がかかるように肩をならしておきたい。とこれは冗談ですが、今年の秋も頑張りたいと思います」
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(第2局で立会人を務めた大内延介九段が祝賀パーティの乾杯の音頭を取った)
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(竜王杯を手にする渡辺明竜王)