2010年10月27日 (水)

「先手持ち」の形勢

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封じ手開封から2時間が経過した。上図は羽生名人が▲4一角と打った局面だ。
森内九段はこの局面を次のように判断する。

「後手は入玉狙いですが、▲1三歩成としてくれないので、玉が上に行けずに困りますね。▲4一角に△3三銀としたいのですが、▲2九飛のときに味のいい受け方が難しいです。△2五銀なら▲7四角成~▲6四馬~▲5五歩を狙います。この変化は△3三銀が5筋を薄くして、マイナスになっていますね。1四の歩は△2五桂と跳ねられても、拠点として働いているので、すぐに触らず、ベストのタイミングで▲1三歩成としたいです。総合的に判断して、先手良しと思います」【森内俊之九段、棋譜コメントより】

棋譜解説チャットの飯島七段は次のように語る。

「(1)△3一金と角に当てて受けたいのですが、▲7四角成で次に▲3六歩という攻めの手段もできています。以下△同成銀には▲1三歩成△同玉▲3六飛です。そこで(2)△1二歩▲7四角成△2五桂▲2九飛△2七桂がまず予想されます。これは後手玉が△3三玉~△2四玉と入玉を狙う展開になる可能性が高いです。(2)の変化では△2五桂と逃げられてしまいましたから、先手も△1二歩には▲7四角成でなく、▲1三歩成△同歩を利かしてから▲7四角成が一番良いのではないでしょうか」(飯島栄治七段)

実戦は飯島七段が予想した通り、△1二歩▲1三歩成△同歩▲7四角成と進んだ。

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羽生名人は貴重な一歩を入手しつつ、渡辺竜王から奪った角を強力な馬に昇格させた。

「とても難しい局面になりましたが、第一感は△1七香成です。以下▲6四馬に△7三歩▲5五歩という感じでしょうか。(現在の形勢について尋ねると)難しい質問です。封じ手▲1三桂成の局面では、先手がかなり余裕がある形勢かと思いましたが、後手の△3四香が光っています。現在もまだ先手が少し良いと思うのですが、先手としては△3三玉~△2四玉という展開(入玉を目指される展開)はなるべく避けたいので、先手が少し忙しくなっているかもしれません。現段階ではやや先手持ちです」(飯島栄治七段)

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(今朝の山景。雲が影を落としている)

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