カテゴリ

2009年5月 7日 (木)

終局後

Dsc_0067_2 Dsc_0105_2 Dsc_0073_2

挑戦者は木村一基八段に

11  稲葉四段も、ここまで善戦してきたが、ついに力尽きてしまったか?どうやら、先手に適当な手がなく、加えて、銀を相手に渡してもまだ後手玉は詰まない。
 例えば、▲3三歩△同飛のところで、次に▲2二金と打っても、△8七歩▲9八玉△7六銀成(図)と、金を取っておいて、先手万事休す。そんな矢先、稲葉四段が▲6八金と指した。これには、一同、「勘違いか?」との声。「これは、△7九銀でダメでしょう。」 
 その通り、間髪を入れず、木村八段は、△7九銀と指した。急転直下で終局が近づいてきた様相。控え室も慌しくなってきた。

 そこから、数手進むが、126手で稲葉四段が無念の投了。序盤、中盤、終盤と見所が多い将棋だった。勝った木村八段は、これで、羽生棋聖への挑戦権を獲得した。昨年の借りをこの五番勝負で返したいところだろう。
 終局後にコメントを求められた木村八段は、「タイトル戦では、まだ勝ったことがないので、一生懸命頑張りたい。」と控えめなコメントではあったが、語気に力はあったように感じた。一方の稲葉四段であるが、今回は、惜しい結果となったが、関西のホープとして、今後の活躍に期待したい。

渋い応酬から一転して激しい手順に

 100手目の△9三桂は、いかにも木村八段らしいというべき一手、徹頭徹尾「何もさせませんよ。」というところだろう。それに対しての、▲8二歩成は、これまた落ち着いていると言うか、なんと言うべきか。香車をとる、という明確な狙いがあるのは、当然なのだが、果たしてそんな余裕がこの局面であるのだろうか?その後、△1三馬▲2八飛と、かなり渋い手の応酬となっている。

 ところが、ここで事態が一転する。木村八段は、虎の子の一歩を使って、6七に手裏剣を飛ばした。ここで、しばらく稲葉四段が考えていたが、▲同金(図)とした。その手を待っていたかのように、木村八段の△5六銀。対して、読み筋とばかりに、△3九角(図)までノータイムで進む。

9 10

熱戦

 形勢は再び混沌としてきた。モニタを見つめる棋士達も白熱してきた。関西から明日の対局向むけて、豊島将之四段が控え室に現れた。勝又六段が豊島四段と検討を行っている。序盤の研究手順についても、勝又六段が質問を投げかけていた。
Dsc_0060 Dsc_0061

変調か?

 将棋は、やはりと言うべきか、奥が深いとつくづく感じる。少し前まで、木村八段が優勢だろうという見解で一致していた。が、しかし、この数手で、木村八段がやや変調か?といった空気が漂いはじめている。
7_2  微妙に揺れ動く形勢は、再び稲葉四段に傾き始めている。先手の狙いとすると、図から、△同飛は▲2三飛成。△同馬に対しては、後手の飛車の横利きが止まるので、▲8二歩成が実現する。先手は、6八金としたことで、玉型がまとまってきて、堅くなっている。これによって、再度攻撃の態勢が整ってきたようだ。

研究は怖い

6  控え室は、賑やかになってきたのだが、68手目局面(図)では、依然先手がきついとの評は、変わらないようだ。稲葉四段の▲5六銀に対して、木村八段は△8五角成とした。木村八段は、完封を狙いだ。

 さて、ちょうど時を同じくして、名人戦第3局が行われている。先ほど「研究」について書いたが、その補足事項として第62期第2局名人戦について書いておく必要があるかもしれない。

 第62期名人戦第2局の二日目の昼。62手目に、羽生名人が3時間46分の長考をした。長考の記録に関する正式なデータはないが、1976年以降のタイトル戦番勝負に限っていうと、1980年に行われた第34期王将戦第3局の米長永世棋聖の3時間37分を24年ぶりに更新した「記録」であった。
 それはさておき、 実は、この将棋は、長考の2手前まで、1ヶ月前に行われた対局と全く同一局面であった。直前に先手の森内竜王(当時)が前例から離れ、「これで先手よし」と言われている手を指した直後のことであった。研究済みの局面において、羽生善治名人ほどの棋士が長時間考え、それでも勝ちに結びつける手が出なかった。すなわち、「研究された」とは、こういうことなのだろう。その反動なのか、或いはアンチテーゼとしてか、「研究」からの脱却、即ち、力戦調将棋が増えるようになった。結果、序盤早々の指し手が多彩になったと言えるだろう。

 真田七段も、「研究とは怖いんです。」と言う。この対局もそうかもしれない。研究している中に飛び込むのもそうだし、その研究を上回る返し業があった場合、研究していた当人にとっても怖さがある。何しろ、修正がきかなくなり、挽回が難しくなるからだ。従って、ミクロレベル、さらに今風に書けば、ナノレベルの精緻さと深い下調べが必要になってくる。そして、その量と質も問われる訳だから、当然並々ならぬ努力がそこに介在しなければなるまい。プロだから当然、そう言ってしまえばそうなのかもしれない。しかし、逆に、どれだけ用意周到に研究を重ねていたとしても、それらが一瞬にして瓦解してしまうこともある。将棋奥深さと魅力は、そこにあるのだろう。

控え室

Dsc_0058  15時30分頃、控え室に、俳優の矢崎滋さんがいらっしゃった。将棋ファンであると同時に、木村八段のファンということで、さっそく、深浦康市王位とともに継ぎ盤で検討を始めた。この様子からも、矢崎さんが相当の指し手であることが分かる。傍らで聞いていると、深浦王位、勝又六段と話している内容も真剣そのもの。熱心さが伝わってくる。

さて、夕刻近くになって控え室もだいぶ賑やかになってきたのだが・・・。

=== Copyright (C) 2009 >>> The Sankei Shimbun & Japan Shogi Association === All Rights Reserved. ===