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2010年4月28日 (水)

「私の金は3三にいるんですよ」

控え室を訪れたのは、佐藤天彦五段。現在別室で千葉幸生五段と対局中(棋王戦予選)である。置かれた盤を見て「どちらがどちらですか?」と尋ねる。記者が「飛車を振っている方が竜王です」と答えると、「私とは金と銀が違いますね。私の金は3三にいるんですよ」とポツリ。そちらの盤面の方も気になる。

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(佐藤五段が見ていた盤面。写真奥が渡辺陣)

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(この銀が金になっている、ということは……阪田流向かい飛車?)

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(朝、土砂降りだった雨は弱まり、今はしとしとと降っている)

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玉の囲いが進む

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図は午前11時ごろの局面。お互いに玉形の整備を進めている。先手は矢倉、後手は美濃囲い。盤面の右半分を見ると、2筋では互いの飛車先が均衡を保っている。この形では、後手から飛車交換を挑む手段がある(具体的には△4四銀~△3三桂~△2五歩)。先手は飛車交換を挑まれても困らないように考えながら、駒組みを進める必要がありそうだ。

21手目までの消費時間は▲深浦29分、△渡辺18分。

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渡辺、意表の振り飛車

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対局開始から20分ほど経った頃、渡辺が飛車を横に動かした。居飛車党の渡辺が飛車を振るのは珍しい。といっても同様の実戦例がないわけではなく、実際に今期の棋聖戦本戦準決勝▲稲葉△渡辺戦でも、渡辺は「ゴキゲン中飛車」を選択している。

図の△4二飛は「四間飛車」の位置。戦法としては「角交換型振り飛車」に分類され、新しいタイプの振り飛車とされる。従来の振り飛車は角道を止めて戦う戦法で、「振り飛車には角交換を狙え」という格言があったほど。ゆえに角を交換したうえで飛車を振る、という本局のような形は「新しい」のである。

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深浦が先手、対局開始

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(振り駒の結果、と金が三枚出て深浦の先手に。記録係は杉本和陽三段)

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対局直前(2)

Imgp3614_2 【深浦康市王位】
1972年2月14日生まれ、長崎県佐世保市出身。花村元司九段門下。1991年10月に四段昇段し、プロデビュー。
2007年に自身初タイトルとなる王位を獲得。「九州にタイトルを持って帰る」という約束を果たした。

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対局直前

Imgp3611_2  【渡辺明竜王】
1984年4月23日生まれ、東京都葛飾区出身。所司和晴七段門下。2000年4月に四段昇段し、プロデビューを果たす。史上4人目の中学生棋士である(加藤一二三九段、谷川浩司九段、羽生善治三冠に続く四人目)。2004年に20歳で竜王を奪取し、現在6連覇中。永世竜王の資格を持つ。

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第81期棋聖戦挑戦者決定戦、午前10時より対局

羽生善治棋聖への挑戦権を賭け、挑戦者決定戦が本日「東京・将棋会館」にて行われる。対局開始時刻は午前10時。

決定戦を争うのは、渡辺明竜王と深浦康市王位。実力十分のタイトルホルダー同士の対局だ。渡辺は今期、決勝トーナメントで久保利明棋王と前回の挑戦者決定戦に進出した稲葉陽四段を破っている。第78期(2007年)には久保との決定戦を制し佐藤康光棋聖に挑戦しているが、3-1で退けられている。一方の深浦は今期、藤井猛九段、郷田真隆九段とA級棋士を破って決定戦に進出。過去には第72期(2001年)に挑戦者決定戦に進出しており、郷田と決定戦を争っている。結果は郷田の勝ちで、羽生棋聖への挑戦はならなかった(過去の対局データにおける棋士の肩書き・段位は対局当時のもの)。渡辺が勝てば、羽生とのタイトル戦は2008年の竜王戦以来になる。また深浦が勝てば、羽生とのタイトル戦は2008年の王位戦、2009年の王将戦に続き3年連続となる。

両者の対局は公式戦で過去に13局あり、渡辺が5勝、深浦が8勝という成績だ。ただし直近の3戦では渡辺の3勝と、ここ最近で渡辺が盛り返している印象がある。

なお、本日の中継では、烏(からす)記者が棋譜及びコメントの担当を、文(ぶん)がブログを担当する。最後までご観戦いただければ幸いである。

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