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2010年6月26日 (土)

1手損角換わりの基礎知識――「手損」と「形の得」の拮抗

本局は「1手損角換わり」と呼ばれる戦型に進行した。
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図は後手から角交換した局面。後手は△8八角成で1手使い、先手は図から▲8八同銀で角を取り返しつつ銀を動かせる。つまり、後手は自分から角交換すると手損になる。これが「1手損角換わり」の名前の由来だ。将棋は1手1手交代で指すゲーム。たくさん指せれば有利になると考えるのが普通だろう。だが、この場合は「形の得」という概念が絡み、手損の評価を複雑なものにしている。
下の図を見てほしい。
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1手損角換わりから「腰掛け銀」という形に進んだ局面。普通の角換わりであれば、後手は△8五歩と突いているところ。ところが1手損のため、図では△8五歩が入っていない。これはマイナスでしかないのだろうか? 実は、この△8五歩を「保留」することで、後手は△8五桂と跳ねる余地ができている。これは反撃としては相当に効果的だ。さらに、図で過去に「指せない手」であった△4三金右や△2二玉を可能にしてもいるのだ! つまり、後手は△8五歩を保留することで、「手損」を「形の得」として生かしているのである。
「手損する」という常識破りの工夫によって、普通の角換わりとは異なるまったく新しい世界が開けた。この戦型には、まだ多くの可能性、未発見の課題が埋もれている。新鮮な、未知の局面に出会える――それがこの戦型が、トッププロをも魅了する理由なのだろう。

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休憩時の対局室

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(羽生棋聖の玉。駒は児玉龍兒作、書体は「鵞堂(がどう)」)

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(深浦王位の玉)

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昼食

両対局者の昼食メニューは次の通り。羽生棋聖は「飛騨牛ハンバーグステーキ、パン、グリーンサラダ、フルーツ盛り合わせ、オレンジジュース」。深浦王位は「稲庭うどん、おにぎり、メロン、オレンジジュース」。

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(以上が羽生棋聖の昼食メニュー)

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(以上が深浦王位の昼食メニュー)

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昼食休憩に入る

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12時になり、昼食休憩に入った。そのときの局面が上図である。棋譜解説チャットの中座七段は、図の▲3七桂を「この手は△6四銀に対応した手です。▲4五桂の筋を見せて、後手の動き(特に飛車)を牽制しています」と解説。「△6四銀の一手を境に、局面は急展開を迎えています。ここから激しい攻め合いになりそうです」と、再開からの展開を予想した。
ここまでの消費時間は▲羽生棋聖が1時間13分、△深浦王位が1時間24分。

対局再開は13時から。

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立会人と副立会人と理事

別室で色紙を書いていた中村九段が控え室に戻ってきた。青野九段、北浜七段と談笑する。昨夜の阿波踊りについて尋ねられた中村九段、「後ろ振り向いたら誰も踊ってくれてないんだもんなあ。ああいうのは副立会の仕事でしょ」。すると北浜七段は首を振りつつ「いやいや……私は体育2でしたから」と合理的な言い逃れ。「美術もダメだったんですよねえ」と懐かしげに言うと、青野九段も「あー、美術はね」と頷く。三人の成績表が見てみたい。

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(北浜七段(左)、中村九段(右))

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(美術が苦手? 青野九段)

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お詫びと訂正(北浜七段)

記者「以前に紹介した詰将棋の配置が間違っておりました。お詫びして訂正致します……ということでよろしいですか」
北浜七段「はい、それでお願いします……」

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(「玉方4二角が抜けていました。3年ぶりに書くとこういうことになるんです」と北浜七段)

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梅田望夫氏、来訪

11時すぎ、第1局でウェブ観戦記を執筆した梅田望夫さんが片上六段、北尾まどか女流初段とともに来訪。普段はシリコンバレーで仕事をしている梅田さんだが、ふた月に1回ほど東京に来る機会があり、今回は東京から豊田市にやってきたという。「今回は観戦記は書かないんですか?」の問いに「今日は遊びに来ました」と笑顔で答えていた。

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(記念撮影? 左から片上六段、北尾女流初段、銀杏記者、梅田さん)

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(銀杏記者の作業の様子を見つめる梅田さん)

(文)

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