感想戦終了後に防衛を決めた藤井棋聖の記者会見が行われました。
【藤井聡太棋聖 防衛記者会見】
――4連覇達成のご感想と、来期は永世称号が懸かる勝負になることについて抱負を聞かせてください。
「今期、防衛できたことをとても嬉しく思っています。ただ、今期の4局の内容を振り返ってみると、押されている将棋も多くて。佐々木七段の強さを感じる場面も多くありました。これまでの期の中でも大変なシリーズだったのかなと感じています。来期は永世称号が懸かるということで、そういったチャンスは初めてのことになりますので、来期が始まるまでに少しでも実力を高めて臨めるようにできればと思います」
――明日で21歳になられます。1年前の五番勝負第4局の前後で誕生日を迎えられて。この1年、かなりお忙しかったと思いますし、濃い1年だったかと思います。7冠を獲得されたり、初めての海外対局もありました。改めまして、この1年で印象に残ったできごとなどがありましたら教えてください。
「1年を振り返ると本当にいろいろなことがあったなと感じます。まずは名人戦の大舞台に立つことができたのは、凄く自分にとって大きな経験になったのかなと思っています。直近1年間のタイトル戦ですと、広瀬八段や羽生九段など、これまでタイトル戦では対戦がなかった方と当たる機会も多くて。今回のシリーズもそうなのですけど、凄く学ぶことが多かったかなと思っています」
――直近で、まだ持たれてない8つ目のタイトルの王座戦の挑戦権が懸かった対局が近づいています。今回、棋聖位の防衛も8冠への第一関門ではあったと思います。また、王位戦もまだ残っています。その王位戦の防衛戦と8冠目への想いを聞かせてください。
「そういったことを期待していただいていることは嬉しく思うのですが、自分としては、それほど意識はしていなくて。王座戦では、これまでタイトルに挑戦する機会が作れなかったので。いまはそこを目指したいという気持ちは持っています。また、王位戦では、今回の棋聖戦の内容を踏まえながら、いい将棋が指せるように頑張っていければと思っています」
――先ほど、局後のインタビューで、防衛戦が年々厳しくなってきていると感じている、とおっしゃっていました。逆にいえば、挑戦する立場のほうが、気は楽といいますか、無心で臨めるというようなことも感じているのでしょうか。
「ああいや、先程の発言は、そういった気持ちのことというよりは、将棋の内容についてで。本局もそうだったのですけど、特に後手番のときに、序盤から主導権を握られてしまうような展開が増えてきているなと思っているので。そこは今後も大きな課題になるかなと思っています」
――今の質問に関連して、年々厳しくなっている、特に後手番で主導権を握られる展開が、というお話しがありました。この要因について、ご自身の中で伸び悩みを感じておられるのか、もしくは研究が進んで、後手番の対策が非常に難しくなってきているという意味合いなのか、そこについても教えてください。
「私自身の成績で見ると、ここ2年ぐらいでは、先手と後手で勝率におそらく2割以上差が出ているので。やっぱり後手番でどう戦うかというのが非常に難しいところなのかなと思っています。要因というと、最近の将棋は、後手番の作戦が非常に洗練されて来ていて。1局毎に新しい工夫をされる将棋がかなり多くなっているので。それに対して、なかなかうまく対応できていないことが多いのかなと思っています。本局についても、序盤でこちらの認識に甘いところがあったのかなとも思っているので、そういったところを少しずつ埋めていかなくてはいけないのかなと考えています」
――本局の内容つきまして、△8七歩成(74手目)と指したところで、勝負手という表現があったのですが。対局中、第一候補の手というよりは、苦肉の策というような意味合いだったのか。他の手だとまずいと思ったのか、ということをもう少し伺わせてください。また、感想戦を終えて、何かわかったことがありましたら教えてください。
「戦いが始まったあたりから全体的に少し苦しいのかなと感じていて。その中で勝負手のつもりで指していたのですが。(△8七歩成に代えて)単に飛車を取る手(△2六香)も、やはり少し苦しい形勢なのかなと思っていたので、そういった意味もあって△8七歩成を選んだというところがあったのですが。ただ、(77手目に本譜▲3四香に代えて)▲7三香という手が対局中は見えていなかったのですけど、指されていたら厳しかったみたいなので。ただ、難しい局面で、時間も多くはなかったので、そのこと自体はやむを得ないかなと思っているんですけど。その前から少し、形勢を悲観してしまっていたというか。こちらの手段が、手前の局面でいろいろ考えられたと思うので。ちょっとその辺りの判断に課題が残った部分もあったかなと思っています」
――本局は相掛かりという戦型でしたが、藤井棋聖自身も先手でよく指していた時期もあったと思うのですが。現状、改めてこの戦型と向き合ってみて、以前と違う部分があるのか、まだまだ可能性があるというか、いろいろわからないことが多いなという印象なのか。その辺りはどのように考えているか教えてください。
「相掛かりは、序盤からかなり選択肢の広い戦型で。指していてもわからないところが多いなと毎回感じています。ただ、細かい手の組み合わせで、かなり変わってきてしまうところが多いので。そういった形に関する認識をより深めていく必要があるのかなと思っています」
――中継をご覧いただいているファンのみなさまへ一言お願いいたします。
「遅くまで対局をご覧いただきありがとうございました。本局は序盤から佐々木七段に積極的に動かれて、こちらが少しずつ損をしてしまうような展開で。その辺りが自分の課題が出てしまったのかなと思っています。終盤もいろいろあって、本当に難しい将棋だったのですけど。最後まで集中して指すことができて、結果につなげられたのが凄く嬉しく思っています。来週以降、王位戦を始め、王座戦であったり、対局が続くことになるので、しっかりコンディションを整えて精一杯指したいと思います」
以上で記者会見の内容を終わります。
明日は一夜明けの取材が予定されています。
(八雲)