高島屋は、これまでにも数多くタイトル戦が開催されてきた将棋界に縁の深い宿です。本館は築260年の庄屋屋敷(国の有形登録文化財)で、実に風情ある佇まい。緑豊かな庭園を備えており、対局室からは凛とした美しさを感じさせる竹林を眺めることができます。
「泊まれる料亭」といううたい文句の通り、食事も宿泊の楽しみの一つ。地元の旬の食材を生かした彩り豊かな伝統的日本料理を堪能することができます。
近年の棋聖戦では番勝負の後半の対局場になることが多く、2015年の第86期からは3期連続で、この高島屋において番勝負が決着しています(いずれも羽生棋聖が防衛)。なお、第86期は豊島八段(当時七段)が棋聖に初挑戦した期。決着局となった第4局は、羽生棋聖が6三に打った歩をその直後に▲6二歩成と消しにいったことでも話題を呼びました。
【高島屋】
http://www.takasimaya.co.jp/
【第86期棋聖戦五番勝負第4局 ▲羽生善治棋聖-△豊島将之七段戦(肩書は対局当時)】
http://live.shogi.or.jp/kisei/kifu/86/kisei201507150101.html
(故・原田泰夫九段が「名局の宿」と書した掛け軸が飾られている。原田九段は新潟県分水町の出身)
(睡蓮)
両対局者が退場したあとは、屋敷九段と村山七段による明日の見どころ談義が始まりました。
村山 豊島八段が奪取に王手をかけていまして、羽生棋聖がカド番に追い込まれているわけですけれども、明日は羽生棋聖が先手番ということですから、羽生棋聖がいまいちばん自信のある戦法、経験のある戦法で臨まれると思います。私の予想は角換わり腰掛け銀です。屋敷九段はどうでしょうか。
屋敷 では私も一緒で(笑)。同歩ということで。
村山 すごいエコな感じですね(笑)。
屋敷 後手番の豊島八段が何か変化するということはあるでしょうかね? 腰掛け銀を迎え撃つのか、あるいは先後が一緒だった第2局は、角換わり模様から雁木のような形になったと思うんですけど。本局はがっちりとした角換わりになりそうですか。
村山 そうですね。豊島八段はやはり相手の得意戦法を受けて立つタイプの棋士だと思いますので、明日は大一番ということもありますし、堂々と戦うのかなと。
屋敷 堂々と戦ってタイトルを奪いにいくと。それにしても、今回で89期ですか。今期からヒューリック株式会社さんにも協賛いただいているということで。こちらの高島屋さんも歴史のある対局場ですよね。もちろん羽生棋聖はこちらで相当な回数、対局されていると思いますが、豊島八段は2回目ということですかね。
村山 そうですね。羽生棋聖は10連覇しているんですね。すごいですよね。
屋敷 私も立会人は毎年のようにやっているんですが、10年はやってないですね(笑)。でも毎回のように羽生さんが棋聖としていらっしゃって、大分長いこと持っているなあと思っていたんですけど。
村山 「羽生棋聖」というのが定着している感じがしますもんね。
屋敷 いまは棋聖と竜王の二冠ですかね。タイトル100期が懸かっています。豊島さんのほうは初タイトルということで。
村山 お互いに大きなものが懸かっているシリーズですよね。私、調べてきたことがあるんですけれども、いま羽生棋聖が1勝2敗と追い込まれているじゃないですか。羽生棋聖を応援されている方もたくさんいると思うんですが、そんな皆さんに朗報です。棋聖戦に限りますと、過去10年くらいで1勝2敗に追い込まれたシリーズが3回あるんですね。その3回すべてで逆転防衛を果たされているんです。
屋敷 へえぇー!
村山 だから、今期も結構、一筋縄ではいかないかなと。
屋敷 やはり羽生さんに勝つのってかなり大変ですよね。
村山 追い込まれてからまた、底力を発揮されますもんね。先ほどの検分を傍らで見ていて思ったんですが、羽生棋聖が王将を据える手つきですとか、本番さながらでしたね。いままで見たことがないような迫力を感じました。
屋敷 あ、そうでしたか。まったく気がつかなかったですね。私もいたんですけど(笑)。でもそれはかなり緊張感がうかがえるというか。
村山 普段の検分よりも迫力がありましたよね。
屋敷 確かにぴりぴりした感じはありましたね。このまま対局が始まったらどうしようかなとか(笑)。
村山 そんな雰囲気もありましたもんね。
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戦型予想は、屋敷九段も村山七段も角換わり。そして、剣が峰に立たされている羽生棋聖がどのような戦いぶりを見せるのかが一つの大きな注目点といえるようです。
本日の更新は以上で終了です。明朝からの対局をお楽しみに。
(睡蓮)
乾杯後は高島屋のフロントの片山佑香さんと高島あずみさんから両対局者に花束が贈られ、続けて両対局者による決意表明がありました。
(両対局者に挟まれた左の方が片山さん、右の方が高島さん。高島さんは女将のご令嬢)
皆さま、改めましてこんばんは。第89期棋聖戦第4局の前夜祭をこのように盛大に温かく開催をしていただきまして、誠にありがとうございます。地元の新潟市岩室温泉の皆さま、本当に厚く歓迎していただいて、ありがとうございます。この棋聖戦を長きにわたって主催をしていただいております産経新聞社様、また、今年から特別協賛という形でヒューリック株式会社様にもご協賛をいただいております。あわせてお礼を申し上げたいと思います。先ほどのご来賓の方のあいさつにもありましたように、高島屋さんでの棋聖戦はすでに30年以上の長きにわたって継続していただいております。まさに将棋の宿だと思っております。また私が小学生ぐらいの時に将棋の雑誌を読んでいた頃から、棋聖戦というとこちらの場所で開催をされていたということで、そういう意味では棋聖戦の歴史の大きな道のりといいますか、それを象徴する場所なのではないかなと思っています。個人的にはここの場所でも数多くの対局をする機会に恵まれました。自分にとっても非常に思い出深い場所でもあります。明日からは豊島さんという非常に若い人との対局になるわけですが、自分の持っているものを出し切って悔いの残らないような対局ができればいいなと思っています。皆さま方には大変お世話になります。どうぞよろしくお願いいたします。
皆さまこんばんは。多くの方にお集まりいただき、温かい歓迎をいただきましてありがとうございます。高島屋さんには3年前にきて以来、2回目になります。前回もそうだったのですが、数々の名局が指されてきた場所で自分が対局するということが不思議なようにも感じますし、またとてもうれしく思っています。明日は自分にもプレッシャーが掛かってきて難しい対局になるとは思うんですけれど、自分らしく思いきりよく決断よくということを心がけて自分の力を発揮できるように頑張りたいと思います。関係者の皆さまと地元の皆さまにはお世話になります。よろしくお願いいたします。
(睡蓮)
18時から、前夜祭が盛大に執り行われました。
非常に胸が高鳴っておりまして、この日がくるのを待ちに待っていました。羽生先生におかれましては国民栄誉賞を受賞されてから初のご来館ということで、本当にありがとうございます。このシリーズでタイトル獲得通算100期に挑むということもございます。豊島八段におかれましては初タイトルに王手を掛けていらっしゃるということで、非常に緊迫した一番ということで非常にドキドキしているところでございます。
燕市は分水町と合併して燕市になったわけですが、原田泰夫九段が分水町出身ということと、高島屋の女将が燕市出身というご縁で、毎年この棋聖戦の前夜祭に参加させていただいております。最初にお邪魔した3年前が羽生棋聖と豊島当時七段との対戦でした。
(堀晃和・産経新聞東京本社編集局文化部長による主催者あいさつ)
第4局がこの高島屋で行われますことを主催者として、また個人的にも大変うれしく思っております。私事になりますが、四半世紀前に記者の駆け出しの頃、4年間この地で暮らしました。明日の対局の主役は両対局者のお二方だと思っております。ですが、タイトル戦を開催するに当たって対局会場の、そして地元の厚いご支援がないとこのように立派な対局を組むこともなかなか難しいと思っております。このように長く続いている宿というのも、なかなか珍しいと思います。
立会人を務めておられる屋敷九段とは、1990年に高島屋さんで棋聖戦を戦わせていただきました。28年前ですから、豊島さんが生まれた頃ですね。私が当時24歳で、屋敷さんがまだ10代でしたね。お互い歳を取りましたね。自分より二回りも若い豊島さんが挑戦者として羽生さんに立ち向かうという場に立ち会わせていただくことを非常にうれしく思っております。明日は名局・激闘が誕生しますことを皆さんとともに期待しています。
この岩室温泉の高島屋で素晴らしい日を迎えることができることに感謝しております。
この岩室温泉は国民保養温泉地です。昭和38(1963)年に指定されまして、この温泉地は300年前から続いています。高島屋は江戸から続いた庄屋屋敷の佇まいを持った旅館で、国の登録有形文化財に指定されています。旅行される際は岩室に足を向けていただきたいと思います。
(睡蓮)