「皆さまこんばんは、斎藤慎太郎です。私は今期棋聖戦で初めて決勝トーナメントに出場することができました。トーナメント表を見ると棋聖戦五番勝負に何度も出られているような先生方ばかりでしたので、正直臆していたんですけれども、何とか幸運もあってここまで来られたなと思います。
淡路島には幼少の頃に1度だけ旅行で来たことはありますが、その後はなかなか縁がありませんでした。このような形で、対局者としてはもちろん、お仕事で来させていただくのは初めてでした。ですが大阪から明石海峡大橋を渡る車中、窓からの景色を見て幼少の記憶が蘇ってきたといいますか。私としてはそのような経験は生まれてからなかなかないものですので、それだけこちらの景観には記憶を呼び戻したり、人を感動させるものがあるという風に感じました。この雄大な淡路島で対局できることをとても光栄に思っています。
羽生棋聖との五番勝負ということになりますが、私の将棋のルーツは羽生棋聖の入門書でした。100冊ほどある中から偶然選んだのが将棋本であり、羽生棋聖の本でした。そこにはやはり縁を感じずにはいられません。今回の五番勝負、もちろん勝負として挑んでいかなければならないのは分かっているんですけれども、何か……うれしさといいますか、感慨深さといいますか、そういう気持ちもありまして。それが、将棋がすごくよい内容になるような気持ちに自分で変えていけるように頑張っていきたいと思います。明日からも皆さんお世話になります。よろしくお願いいたします」
(タイトル戦初登場の初々しさのなかに、落ち着きも見られた挨拶だった)
(書き起こし:虹記者。写真:潤)
(潤)
両対局者に花束が贈呈されたあと、羽生棋聖、斎藤七段の順に挨拶がありました。
「皆さまこんばんは。第88期棋聖戦の前夜祭に、たくさんの方にご参加いただきまして、誠にありがとうございます。もうすっかり恒例になりました、淡路島の開幕局ということで、毎回地元の皆さまには熱烈に歓迎していただいて大変うれしく思っております。私もですね、いままで数多くの場所で対局していますけれども、淡路島での対局数も多くなってまいりました。また今回は斎藤七段という、関西の若くて非常に勢いのある棋士と対戦をするということです。いちばん最初に来たのは20年前ですので、ひしひしと時の流れというものを感じざるをえないと。そう思うことも最近は多いです。
最近は将棋界をさまざまな形で取り上げていただくということが増えてきまして、大変ありがたいという風にも思っています。またですね、最近よく取り上げられているのは、大先輩の大先生と、非常に若い……あのー、はい。ちょっとやっぱり、真ん中のところもいるということを見せていかなければ、と思っております。
明日は現地でも大盤解説会が開催されるということで、たくさんの皆さまに対局の展開を見ていただくということになります。やはりいちばん大事なのはですね、将棋の面白さ、深さ、そういうところを対局を通じてファンの皆さまにお伝えしていくことだと思っております。自分なりに精一杯指していきます」
(書き起こし:虹記者。写真:潤)
(潤)
「今年もですね、いよいよこの季節がやってまいりました。棋聖戦であります。本日もこんな多くの方に足を運んでいただいて、大変うれしく思っております。私自身は昨年に続き2度目の前夜祭への参加なんですけれども、やはり素晴らしいですね、ホテルニューアワジ。これから海の幸とお酒が運ばれてくるんですけど、これが本当に美味しいんですよ。ぜひ堪能していただければ。明日からの熾烈な戦いを繰り広げられる羽生さんも斎藤さんをはじめ、皆さんゆっくりリラックスされて、お楽しみいただければと願っております。
さて、今回の棋聖戦ですけれども、最大の焦点は羽生棋聖が10連覇なるかどうかというところであります。そこに立ちはだかるのが大期待の若手、『西の王子』という異名もある斎藤七段であります。イケメンであります。人だかりがすごいんですね。一昨年、昨年と20代の若い挑戦者が続いております。羽生さんもまだまだ若い者には負けられん、と気合満々でいらっしゃることと思います。将棋界に長らく君臨されている絶対王者と若き挑戦者、手に汗にぎる名勝負を切に願っております。
ときにですね、今年は『3月のライオン』という映画が上映されております。神木隆之介さんが主演なさっていて、大変若い方に人気な映画だとうかがっております。将棋というもの、そしてプロ棋士の魅力が広く伝わって、大変よいことだなとうれしく思っております。映画の中では将棋に懸ける若者の人間的な成長であるとか、一方で絶対王者の過酷なまでの孤独感、そういったものが立体的に描かれていて、感動的な物語になっております。それを拝見しまして、羽生さんにしても斎藤さんにしても、語られていない苦労や孤独に打ち勝って、いまこの席にいらっしゃるのではないかと推察しております。改めましてこのお二方に深く敬意を表したいと思っております。明日からぜひ頑張ってください。
産経新聞グループではですね、ほかのタイトル戦にはない付加価値の高いツアーを販売しております。東京や埼玉といった関東からご参加いただいた方もいらっしゃるということで、大変ありがたく思っております。将棋界、棋聖戦を盛り上げていくためにもですね、ぜひお誘い合わせの上でよろしくお願いいたします。
今日は緊迫の勝負の前にですね、ひと時ではありますけど美味しい料理に舌鼓を打っていただき、せっかくの機会ですので羽生さん、斎藤さんと語り合う時間を楽しんでいただければ、これほどの喜びはございません」
「最近では自分が対局するよりあいさつすることばかりが増えて、でも今日は普段のタイトル戦と雰囲気が違うといいますか、ひと言でいうと女性が大変多いなと。私目当てでないことは重々承知しておりますけど、非常にうれしいなと思っております。
第88期棋聖戦五番勝負第1局ですけれども、またこの季節が来たなという風に思います。本当に淡路島の恒例行事といいますか、棋聖戦が開幕するなぁという思いになります。今期の棋聖戦はですね、羽生棋聖が10連覇なるか、そしてタイトル戦初登場で初獲得なるかという斎藤七段の対決です。羽生さんは通算15期を獲得されていまして、今期防衛されますと大山名人、中原名人に並ぶ16期となります。また全タイトルですと現在97期獲得されて、今回の棋聖戦、そのあとに控えております王位戦と王座戦のすべてを防衛されますと、通算100期の大台になりますね。100になったら、何かしら連盟も考えなアカンのちゃうかなぁと思うんですけども。
一方で斎藤さんは関西所属の、いまいちばん勢いのある若手といいますか、関西は最近ずっとタイトル挑戦を続けております。久保さん、千田さん、稲葉君、そして今回は斎藤慎太郎七段ということで非常に活躍しております。イケメンで、なおかつ謙虚で、温厚な性格で、非の打ちどころのない青年なんですね。今回、棋聖戦の観戦ツアーというのが新たに開設されましたけれども、斎藤人気という……いや、羽生さんの人気もあると思うんですけど、いやスミマセン。あのー、やっぱりね、斎藤さんは独身ですからね。
羽生さんの前期棋聖戦は永瀬さんの戦いで、出だしが1勝2敗で危ういと思うところもあったんですけど、カド番になられてから底力を出されて、防衛されました。やはりまだまだ若手には負けられないと今回も思われているのでは、と思います。非常に注目の一戦で、大変な熱戦になると私は確信しております。おふたりの健闘をお祈りしております」
(書き起こし:虹記者。写真:潤)
(潤)
はじめに、関係者より挨拶が行われました。
「大変お忙しい中をこのように多数お集まりいただきまして、皆さまのご出席のおかげで賑やかに開催することができました。世話人を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。
さて明日より棋聖戦五番勝負が始まるわけでございますが、その第1局をこの淡路島のホテルニューアワジで対局するということでございます。主催をされております産経新聞社さま、日本将棋連盟の方々、また淡路将棋連盟の島本会長はご高齢にもかかわらず精力的に動いていただきまして、この前夜祭、そして明日の棋聖戦対局ができるわけでございます。本当にありがとうございます。
皆さまには、このあと懇親会がございますのでゆっくりとご歓談いただきまして、最後まで楽しく過ごしていただければと思います」
「棋聖戦と申しますと阪神淡路大震災の復興ということで、産経新聞社さま、日本将棋連盟さま、ホテルニューアワジさん、また実行委員会の皆さんのおかげで、淡路洲本で行われることになります。今回で21回目、淡路の風物詩となっております。
アスリートやアーティストなどいろんな分野で若い方が頑張っておられます。今回挑戦される斎藤慎太郎七段も24歳ということでございます。記録係で来ていただいております桝田悠介三段は洲本出身で、会でも将棋を教えていただいたので、何とか頑張ってほしいと思っております。羽生棋聖に関しましては、棋聖戦10連覇と通算16期が懸かったシリーズです。重鎮と、若い棋士の対戦。いい対局が見られるのではないかと期待しております。
美味しいものを食べて、お風呂に入って、明日の対局に向かっていただければと思います」
(書き起こし:虹記者。写真:潤)
(潤)