両対局者が退場したのち、今回の対局とイベントに関わる棋士が登壇。鈴木女流初段が進行役を務め、それぞれ明日の戦型予想と見どころについて語った。
中村九段「二人はいい勝負をしている印象です。ここ3回のタイトル戦はすべてフルセットでした。たいていの棋士は羽生棋聖と多く指すとコンプレックスを植えつけられるんですけどね。ちなみに私は(羽生棋聖に)10連敗です。第1局、第2局と、わりと最新形で戦っていたのが印象的でした。トップ棋士の宿命ですが、最新形は逃げられないところがあります。深浦王位は、粘り強い接戦での強さが本来の持ち味。ところが、これまでの対局ではそれを発揮できていない感じがします。第1局、第2局は深浦さんが誘導した感があるので、第3局はどのような将棋を指すかが楽しみです。立会人として静かに名局を見守りたいと思います」
北浜七段「第1局で角換わり腰掛け銀同型が出たので、明日は同型にはならないと思います。というのは、3日ほど前に▲渡辺△深浦戦(王座戦)というのがあって、深浦さんは角換わりにならないように誘導して勝ったんですね。だから角換わりにはならないと思います。そうですね、ゴキゲン中飛車になるのではないでしょうか。スコアは追い込まれていても、強く踏み込むのが深浦王位らしさ。予想していない戦型をぶつけてくるかもしれません」
杉本七段「明日は頑張ってもらって、ぜひフルセットまでいってほしい。というのも、実は私、来月の順位戦で深浦さんと当たっているんですが、深浦さん、棋聖戦に負けてしまうと順位戦に照準を合わせてきそうで……。順位戦は再来月から頑張っていただければと(笑)。話は変わりますが、第45期棋聖戦で中村先生が五番勝負を米長先生と戦ったとき、記録係をやっていたのが私なんです。まだ18歳くらいかな。まだ村田顕四段や澤田四段が生まれていないころですね(第45期棋聖戦第4局では、杉本1級(当時)が記録係を務めている)。戦型は5割くらいで1手損角換わりになるかなと思います」
青野九段「さきほど阿波踊りを見させていただきましたけれども、小野政秀さん(フォレスタヒルズ代表取締役社長)も徳島出身とのことで、徳島は人を歓迎する気質があるんですね。えー、戦型予想のような技術的なことは若い人にお任せします。私は大盤解説会のお手伝いを致しますが、技術ではないほうの話をしようと思います」
村田顕四段「フォレスタは初めてです。戦型予想ですか……そうですね、北浜七段のおっしゃったゴキゲン中飛車は流行最先端なので、有力な選択肢だと思います。また、羽生先生と深浦先生は居飛車党同士ですので、1手損角換わりも外せないところです。私は明日、指導対局を行います。よろしくお願いします」
澤田四段「三重県に住んでいます。名古屋はわりあい近いのですが、豊田は結構遠くて、実は初めて来ました。明日の戦型ですか? 矢倉になると思います」
菊地三段「フォレスタには、昨年の名人戦第7局の記録係で来ました。羽生先生と深浦先生の将棋を少しでも身に付けたいと思います」
室田女流初段「明日は将棋フェスタの指導対局や、大盤解説を務めます。明日の対局は、希望としては居飛車対振り飛車を見たいですね。深浦王位がカド番ですが、粘り強さが見られると思います。終盤戦が楽しみです」
鈴木女流初段「明日、指導対局と大盤解説を務めます。明日の戦型は角換わりか矢倉になると思います」
(左から順に鈴木女流初段、室田女流初段、菊地三段、澤田四段、村田顕四段、青野九段、杉本七段、北浜七段、中村九段。なんとも豪華な顔ぶれ)
(よどみないトークで進行役を務めた鈴木女流初段。「鈴木環那です。フォレスタのチャペルで結婚式を挙げるのが目標です」)
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花束贈呈と記念撮影が行われたのち、両対局者より挨拶。
まず深浦王位が次のように語った。「ホテルフォレスタは今回が3回目。対局(第49期王位戦第2局)以外には、棋聖戦の立会いで来たこともあります。非常に広々としていて、気持ちよく対局できたことを思い出しました。棋聖戦は第1局、第2局を落としてしまいましたが、気を取り直して豊田から始まるつもりで頑張りたいですね。朝のサッカー日本代表の試合を少し見ていて、勇気が出てきました。前評判のよくなかった日本がデンマーク相手に3点取りましたので、私も3点取るつもりで頑張ります。どうぞご期待のほどよろしくお願いします」
次に羽生棋聖の挨拶。「フォレスタでの棋聖戦は毎年恒例といっていいほど続いています。対局のみならず、将棋のイベントを開いていただけるということで、地元の皆さんが一体になって棋聖戦を盛り上げてくださっていると感じます。東京は真夏日のような気候だったのですが、ここは周りに緑が多いからか、快適で過ごしやすいと感じました。おかげで明日の対局に打ち込めそうです。今朝はサッカーの話題でものすごい熱狂でしたが、これは、選手やそれにかかわる人々が一生懸命、100%の力を出し切った結果として生まれるのだと感じました。私は棋士ですので、力いっぱいのことをやって、面白い、楽しいと思えるような将棋を指したいと思います」
(鈴木華子さん(中央左)・英里子さん(中央右)姉妹により花束が贈呈され、記念撮影)
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(棋聖戦主催者である産経新聞社を代表し、大阪本社文化部部長である眞鍋秀典氏が挨拶。「第1局、第2局の熱戦を羽生棋聖が制しました。深浦王位はカド番に立たれましたが、きょう岡田JAPANが決勝トーナメントに進出し、サッカーファンの深浦王位も気をよくしているのではないかと思います。第3局はこれまで以上の名勝負を繰り広げてくれると期待しています」)
(日本将棋連盟常務理事、青野照市九段。「棋聖戦は新しいWeb観戦記や、弟子の西尾(西尾明五段)がUstreamで解説の実況をして、将棋界の中でも最先端の発信をしていると思います。第1局、第2局同様、ファンの皆さんに喜んでいただける対局を開催したい」)
(開催地である豊田市を代表し、豊田市市長鈴木公平氏より挨拶。「素晴らしい対局が当市において開催されることを大変誇りに思います。明日行われる大盤解説は定員オーバーの申し込みがあり、将棋フェスティバルも年々参加者が増えてきています。将棋ファンが広がっている印象があります」)
(トヨタ自動車株式会社、代表取締役副社長である小澤哲氏が乾杯の発声を務めた)
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