2008年10月19日 (日)

【梅田望夫観戦記】 (11) 昼食休憩、米長邦雄会長の局面解説

 昨日、佐藤康光棋王にお願いした、昼食休憩時点での「5級向け解説」と「初段向け解説」と「五段向け解説」が好評だったので、指導対局に出かけている佐藤棋王に代わって、今日は米長邦雄会長に、二日目昼食時点での「5級向け解説」と「初段向け解説」と「五段向け解説」をお願いすることにした。

 

「5級向け」

 現在の形勢は、渡辺竜王のほうが玉が堅くて、羽生名人のほうの玉がやや危ない状態。そこで△6四角と打って徹底的に守ろうとしたのが、羽生名人の強いところです。
 これによって5三の地点が堅くなったので、渡辺竜王は▲7五歩から攻めの方向を変えました。
 難しい形勢です。 

 

「初段向け」

 渡辺竜王が攻めて、羽生名人が受けている局面です。4枚の攻めなら指しきらない。3枚の攻めだと攻め切れません。龍と金の2枚で攻めている。持ち駒には桂馬がある。もう一枚、駒がほしい。

 そのためにですね、▲7五歩と突く手では、▲4五銀△同歩▲同桂、と桂馬を参加させる手も考えられた。

 また、単に▲4五桂と跳ねて、△同歩と取らせて▲4四歩とたらして、「と金製造株式会社」社長として、4枚の攻めを完成させることもできた。

 ▲4五桂打△同歩▲同桂として、やはり銀を取って4枚の攻めにしようということも考えられた。

 しかしいずれもうまくいきそうにないので、▲7五歩は、将来、7四歩という拠点を作ることによって、4枚の攻めを実現させるという手です。

 もうひとつ、先手は▲4六銀と▲3七桂の2枚を「自分で動かす」ことによって活用するか、それとも▲7五歩と突いて、手を渡して、銀と桂を「取らせる」ことによって活用するか。

 この局面はですね、羽生名人は、放置しておいてもたいしたことはない。ないんですが、次に▲7四歩と取り込まれ、△同馬ということになると、4六銀と3七桂を取ることができないという仕組みになっているわけです。

 

「五段向け」

 この将棋は戦いの焦点が5三の地点をめぐる攻防だったが、この局面から、今度は一転して7筋の勢力争いになってきた。7筋を制するものがこの将棋を制する。7筋をどちらが制するか。これによって優劣が定まるであろう。

 次の展開の一例をあげると、△4六馬が自然な手で、その後、お互いに7五の地点あたりをめぐっての勢力争いとなろう。そのあとは、▲7四歩△同銀▲6六桂がある。そこで、△4六馬ではなく、一発△6七歩とたたく手がある。▲同金直には、再度△6六歩と打つ。相手の▲6六桂の狙いを消すとともに、攻め合いで勝とうともしている。たとえば、これを▲6六同銀なら、△8六歩▲同歩△6九馬▲6八金引△同馬▲同金△8七歩でたちまちのうちに、後手勝勢となる。

 現時点は羽生持ちという気がします。