(勝った広瀬八段は終盤のミスを認める)
── 一局を振り返って。
広瀬 こちらの陣形はバランスを取るのが大変なので、△8六歩(50手目)~△7六歩と取り込んだのがどうだったか。なんとか互角の均衡を保って終盤を迎えたのですが、恥ずかしいレベルの見落としで負けにしてしまいました。
── 見落としは▲6三馬(107手目)と引かれた局面?
広瀬 そうですね。▲4一飛から竜を取られるのをうっかりして。分かっていれば、それまでに違う指し方があったかと思いますが、本譜はいきなり負けにしてしまったので、最後は勝負するしかなくなりました。
── 次戦に向けて。
広瀬 この将棋は拾った形になりましたが、最終盤のミスは致命的なので、次局以降はその辺に気をつけて頑張りたいと思います。
山崎 序盤は相変わらず面白くない出だしでしたが、中盤で駒がぶつかってから、夕食休憩のあたりは少し指せるかなと思っていました。そのあと誤算があって受けに回ってしまい、チグハグだったなと。最初から、ゆっくりやればよかったのにと後悔していました。最後は負けかなと思っていた局面で大チャンスをいただいたのですが、最後の最後まで踏み込めなくて、情けない負け方をしてしまったなと。こちらが安全なときに寄せにいったほうがよかったと思いますが、具体的な順が分からなくて、中途半端なことをやってしまいましたね。寄せにいくよりは負けないうように指さないといけなかったです。
── 次戦に向けて。
山崎 さすがに大チャンスはものにしないといけないので、もう少し読みの精度と決断力を上げないと勝つチャンスがないかなと思います。その2つを少しでもよくして、いい将棋を指したいと思います。
(書き起こし:夏芽)


挑戦者決定三番勝負第1局は126手で広瀬八段の勝ちとなりました。終局時刻は22時18分。消費時間は▲山崎4時間59分、△広瀬4時間48分。
図の▲6二飛成で山崎八段は一分将棋に入りました。まだ簡単な局面ではありません。
手順中の△4五飛成で△5七歩なら後手よしでしたが、本譜は先手がよくなりました。第14図以下、△4九竜は▲4一飛△3三玉▲4九飛成があって利かず、△5六桂も▲7八玉で詰みません。
△4九飛は▲5四銀に△同玉なら▲2七角の王手飛車取りがあるだけに打ちにくい面もありましたが、広瀬八段は15分の読みを入れて銀桂香取りに踏み込みました。本譜は金を7四につり上げてから▲5四銀でしたが、取らずに△4二玉とかわして王手飛車取りを避けています。山崎八段は飛車取りに▲7二角と打って開き直りました。対して広瀬八段は、構わずに△5六桂と寄せを目指して跳んでいます。