残り1時間を切る 羽生九段は図から▲2一飛成を指しました。この手にかけた時間は28分。豊島竜王は28分間、盤上を見つめたままほとんど動かず、おそるべき集中力で読みふけっていましたが、▲2一飛成が指されると席を立ちました。残り時間は▲羽生36分、△豊島29分。▲2一飛成には△4八とが厳しく、△7八銀までの詰めろになります。△4八と以下、▲3五角△4四歩▲4五桂は△6二玉で後手玉は詰みません。
後手優勢 豊島竜王は図から44分かけて△4四桂を指しました。指しづらい手ですが、貴重な1歩を温存することで▲2六飛に△2五歩▲同飛△5六桂とすぐに桂を使えます。継ぎ盤では「先手きつい」の声が聞こえてきます。ここまで先手にはっきりとした悪手はありませんでしたが、後手がプレッシャーをかけ続けたことが逆転につながったようです。阿久津八段は「豊島竜王の充実ぶりを感じます」と話していました。実戦は△4四桂▲2六飛まで進んでいます。 (2日目朝の豊島竜王)
とっさの判断 (局面が緊迫してきた。阿久津八段の継ぎ盤に関係者が集まる) (モニターから駒音が聞こえた。そちらに視線を向けて「金!?」と阿久津八段) (映し出されたのは▲4一金。一段金は苦心の手か)「▲4一金は予定とは思えません。ほかの手では勝てないということで、とっさの判断で指したのではないでしょうか。豊島竜王がしのげそうですが、まだ後手勝ちとは断言できません」(阿久津八段)
攻めが続くかどうか 後手は3七と8七にと金を作りました。対して先手が猛攻をしているのが図の局面ですが、先手も攻めが止まると一気に苦しくなるため、かなりのプレッシャーを受けています。「もう修正の利かない展開。難解。難しいです」と阿久津八段。中村修九段は「先手は攻めを継続する手段があるかどうか」と懸念を示します。どちらも危ない形をしており、一手ごとに勝ち負けが入れ替わる戦いになりそうです。 (ホテルでは今期七番勝負の手ぬぐいが販売されている)