カテゴリ「第35期竜王戦決勝トーナメント」の記事
夕食休憩時の様子
夕食休憩
この局面で、稲葉八段が13分考えて夕食休憩に入りました。ここまでの消費時間は▲伊藤匠4時間1分、△稲葉2時間38分(持ち時間各5時間)。夕食の注文は、稲葉八段が「珍豚美人(白米、カップスープ)」(レストランイレブン)、伊藤五段が「肉なんばうどん」(やまがそば)。対局は18時40分に再開します。
互いの主張
稲葉八段が端攻めで桂を捕獲し、駒得を確定させたところです。対する伊藤匠五段は▲5九玉と移動して、桂を取られたあとの△7六桂(王手竜取り)から早逃げしました。次に(1)▲4八玉~▲2九飛で右玉の好形となり、働きの弱かった飛車にも活が入ります。また、ここ数手のやりとりで持ち歩が増えたことで(2)▲2四歩△同歩▲2五歩という継ぎ歩攻めも選びやすくなりました。
ただし、そこまで陣形整備をする猶予はないかもしれません。例えば現局面で△1五歩▲同歩△9五香▲9八歩△9七歩成▲同歩に△1六歩(変化図)と垂らして、次に△1七歩成▲同香△1九角から先手陣右辺を荒らす手段が考えられます。これは▲5九玉をとがめたことになりそうです。また1筋ではなく3筋の歩突きから攻めを作るのも一案です。
先手はバランスのよい陣形に組みきれればそれが主張となるでしょう。一方の後手は、駒得確定であること、そして前述のような端攻めなどこの瞬間に動く権利があることが主張です。時刻は17時25分、稲葉八段が40分以上の長考に沈んでいます。
中盤に戻る
数手前、稲葉八段にも1時間以上の長考がありました。それでも残り時間では相手よりも圧倒的に余裕があります。56手目△7三銀までの消費時間は▲伊藤匠3時間49分、△稲葉1時間7分。
いまは激しい変化を回避して戦いがいったん落ち着き、局面は中盤に戻ったといってよいでしょう。以下(1)▲8三桂には△8一金▲9一桂成△同金で、先手に追撃手段がありません。むしろ後手に桂が渡ることで△7六桂の王手竜取りが生じてしまいます。実戦はここから(2)▲7二歩△8二金▲7一歩成と進みました。稲葉八段としては先手の攻めを切らして、持ち駒の豊富さや、盤上の駒の働きでまさる点(先手の2八飛や9七桂が使えていない)を生かしたいところです。
伊藤匠五段、再度の長考
大阪市内の風景
14時頃の局面
先ほどの大長考のあとは両者とも手の進みが早くなっていましたが、図の局面で再度、伊藤匠五段が30分ほど手を止めています。進行の一例は▲8三馬に(1)△8六飛▲6一馬△8九歩成(変化図)。
後手は次に△8八と▲7七金△7六歩(そこで▲8六金には△7七角▲6九玉△7八銀までの詰みがある)という攻めを狙えます。そのため変化図では▲8七歩△8二飛に▲4五桂で終盤戦に突入するかもしれません。
先手は右辺の駒の働きがいまひとつで、特に飛車を下段に引けていないのはネックですが、手順中の▲8七歩で後手の攻めも遅くできるため難解でしょうか。また駒割りは、およそ先手の桂得となりそうです。
現局面に戻って、▲8三馬に(2)△7七歩とたたいて一気に踏み込む手段も考えられます。以下▲同金△7六歩に▲8七金と避けて、後手に追撃があるかどうか。こちらも難解な変化です。