詰めろ逃れの詰めろ 前記事の△6九角に対し、豊島名人は25分の考慮で▲8三金(図)と打ちました。この手は△7八飛▲9七玉△8八銀▲8六玉△8一飛までの詰みを防ぎつつ▲7四桂△同銀▲5二金△6三玉▲5三とまでの詰めろをかけた詰めろ逃れの詰めろです。▲8三金に△8七角成▲同玉△8五飛▲7八玉△8三飛とすれば後手は8三金を抜くことができますが、先手玉も少し余裕ができるので、以下▲5三と(△同玉には▲4四角がある)から自然に攻めていって先手が勝てるようです。中継室の高野秀六段は、「なるほど、これがいちばん手堅いですか」と納得したように口にし、対局室に向かいました。 (豊島名人)
豊島名人リードのまま寄せ合いに 20時54分、玉頭攻めの△8五歩に、豊島名人はじっくり49分考えて▲4三歩成(上図)とし、後手玉の寄せを目指しました。次に先手に手番がくれば、▲8二金が厳しい手になります。実戦は▲4三歩成以下、△8六歩▲同銀△同桂▲同金△8七歩▲同金△6九角(下図)までは早いペースで進行。△6九角は△7八飛▲9七玉△8八銀以下の詰めろですが、▲7八歩と受ければ後手から詰めろを続ける適当な手段が難しいようです。例えば自然な△8一飛には▲5二と△同銀▲8二歩(△同飛なら▲7四桂が王手飛車取り)が利きます。 (豊島名人が勝ちに近づいていると見られる)
残り時間に差がつく 時刻はまもなく20時になろうかというところ。豊島名人の強攻に対し、渡辺明三冠が悩まし気な様子で考える姿が目立ってきています。図の局面での残り時間は豊島名人が1時間39分、渡辺明三冠は24分です。 (渡辺明三冠。時間が切迫してきた)
豊島名人が踏み込む 18時40分になって対局が再開されると、豊島名人は▲4三歩成△同金上▲同飛成(図)という飛車切りの攻めを決行しました。これで一気に終盤戦に突入です。 (豊島名人。最強の順で勝ちにいった)
夕食休憩 18時、この局面で豊島名人が21分考えて夕食休憩に入りました。ここまでの消費時間は▲豊島3時間17分、△渡辺3時間26分。夕食の注文は、豊島名人が「カレーライス」(ほそ島や)。渡辺明三冠は注文なしでした。対局は18時40分に再開されます。 (夕食休憩時の特別対局室) (▲7一歩成△同飛の交換が入ったところで休憩に)
どう攻めるか 17時30分、渡辺明三冠が57分の考慮で△5四歩と受けました。先手はここで無難にいくなら▲7一歩成△同飛に▲8二角ですが、▲8二角ではなく▲4三歩成△同金寄▲同飛成と切り込んでいく筋も考えられるようです。 (渡辺明三冠) (豊島名人)
小味な手裏剣 時刻は16時30分を過ぎました。▲5八金に、渡辺明三冠は1時間13分考えた末に△5二玉と玉の位置を調整。以下▲4九飛△5三金右▲7二歩で図の局面です。豊島名人の▲4九飛と▲7二歩は、ともにノータイムでの着手でした。特に▲7二歩はなかなかの手との評判で、△7二同銀なら▲5四角が厳しい手で先手勝ちですし、7二歩を放置しても▲7一歩成△同飛▲8二角があります。 「これは効いたね」(先崎学九段)「受けなきゃいけないところが多すぎますなあ」(高野秀行六段) (豊島名人がペースを握りつつあるか) (中継室で記者に解説しつつ進行を見守る先崎九段=右と高野秀六段)
渡辺明三冠が熟考中 時刻は16時を回りました。図の▲5八金に、渡辺明三冠が50分ほど考えています。後手は△5四歩と打って5五銀を引かせられればよいですが、先手からは銀を引かずに▲1七角(△5五歩に▲4三歩成の狙い)や▲4九飛(△5五歩に▲1七角~▲4三歩成の狙い)という手段が考えられ、△5四歩が成立するかどうかは微妙なところであるようです。 (渡辺明三冠)
長考での決断 図は15時頃の局面です。前記事の△7四桂に対し、豊島名人は56分の長考で▲4四歩(図)を着手。ほかには▲4四銀、あるいは一本▲2四歩と突き出しておく手も考えられたところで、それらの比較のために時間を使ったものと思われます。ここは後手の渡辺明三冠としても、△3四金と強く歩を払うか、△4二金と低い姿勢で耐えるか、一つの分かれ道。なお、△4四同金は▲同銀△同玉に▲4五歩で後手玉が危険です。 (豊島名人)