◆対局者あいさつ
【糸谷哲郎竜王】
「高野山には今回初めて参りました。高野山に登るために乗ったケーブルカーには、たいへん驚かされて、私の故郷である出島のものとは比較にならないほど素晴らしい景色で、その高さに圧倒されました。また、高野山の町に入ってからも、お寺やその景色に圧倒され続けました。
高野山は、升田先生と大山先生の間で指された「高野山の決戦」や、羽生先生と郷田先生の名人戦など、大勝負が行われた場所でもあり、そのような場所で対局できることを嬉しく思うとともに、負けないような棋譜を残せるよう頑張りたいと思います。
夕食会でいただいている精進料理の胡麻豆腐は、とても濃厚で、ミルクのような感じといえば語弊があるのかもしれませんが、豆腐だとは信じられない食感でした。また、お刺身も大変おいしゅうございます。といってもまだいただいている最中ではあるのですが(笑)。ありがとうございました」
【渡辺明棋王】
「高野山には初めて来ました。イメージとはかなり違ったものでして、もっとお寺っぽい感じを想像していて、ひとつの町としてなっているとは存じていませんでした。町並みには生活感があり、建物などを見ているとその歴史を感じさせます。
また、大自然の中の紅葉は、普段の東京での生活では見ることができず、対局前ではありますが、観光に来たような気分になっており、とてもリラックスしています。精進料理自体はこれまで何度かいただいたことがありますが、こういったコースのようなものは初めてで、とても驚いています。
高野山は将棋界にとてもゆかりのある地で、約70年前に、「高野山の決戦」が行われた場所でもあります。将棋の内容も有名な熱戦で、将棋ファンなら一度は目にしたことがあるのではないかと思います。そのような場所で今回竜王戦の対局者として指せることは、棋士冥利に尽きますが、升田先生が残された名セリフ(「錯覚いけないよく見るよろし」)は、できれば言わないですむように気をつけたいと思います」
(文章書き起こし=潤記者)
◆ゲスト紹介
(田村隆照・京都市立芸術大学名誉教授)
1948年「高野山の決戦」の舞台・普門院で、当時修行僧でした。
◆中締め
(井上慶太・日本将棋連盟理事)