カテゴリ「第23期竜王戦七番勝負第2局」の記事 Feed

2010年10月27日 (水)

Ryuou20101026142 渡辺明竜王に羽生善治名人が挑戦する第23期竜王戦七番勝負第2局は渡辺竜王の勝ちとなりました。終局時刻は18時54分。消費時間は羽生7時間52分、渡辺7時間42分。この結果、渡辺竜王が2連勝となりました。第3局は11月10・11日(水・木)北海道河東郡音更町「十勝川温泉 第一ホテル」で行われます。
(銀杏)
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(羽生名人、投了の瞬間)

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図は18時40分頃の局面。渡辺竜王が△8九飛成と先手玉に迫る。後手玉も挟撃されていて危険な状況だが、どうやら渡辺竜王が勝ちに近づいているようだ。「これは後手の勝ちの流れに、はっきりなったと思います。△6二銀がしっかりしています。やっとはっきりしてきました」と飯島七段。東京でこの将棋を検討している三浦八段も、「この局面で手を止め、天井をにらみつけています。何か手段は無いか、探しているようです」【ともに棋譜解説チャットより】

18時40分過ぎ、モニタからは「羽生先生、残り15分です」と読む門倉三段の声が聞こえた。

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(18時40分頃の控え室。この後ほどなく、継ぎ盤はぱたりと動かなくなった)

(文)

18時8分、羽生名人は席を外している。するとモニタ越しに渡辺竜王のつぶやきが聞こえてきた。搾り出すように、「わっかりません……」。そして記録係の門倉三段を見やる。

渡辺竜王「残り何分あるの?」
門倉三段「22分です」
渡辺竜王「えー……わかりませんけど……」

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18時16分。羽生名人が頭に手をやりながら「んんー?」と声を上げた。何が見えたのだろうか。

(文)

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図は17時45分頃の局面。渡辺竜王は王手飛車を恐れず、△8四桂と果敢に攻めていく。ここで▲6四角が王手飛車。以下、△4二角▲5三銀△9六桂▲9八玉△9七歩▲同玉△8九飛成▲4二銀成△同飛(A図)。
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A図以下(1)▲2三香成は△9九龍▲9八角△8九銀(B図)。
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B図、後手玉は▲3二成香△同玉▲3三金△2一玉▲2二歩△1一玉と進むと打ち歩詰め!

△4二同飛(A図)には(2)▲2三金が正しく、これなら▲3二金△同玉▲3三金の詰めろになっている。羽生名人、形勢逆転を引き寄せる攻めとなるか。

【棋譜解説チャット・飯島栄治七段の見解】
「私も控室で検討されている手順、▲6四角△4二角▲5三銀△9六桂と進むと思います」

【東京・将棋会館、三浦弘行八段を中心とした検討】
△8四桂の局面から、▲2三香成△9六桂▲9八玉△9五香▲9七歩△8八香といった変化が並べられている。

(文)

形勢は後手よしではっきりしている。控え室では「渡辺竜王がどのように勝勢、そして勝ちへ持っていくか」といった雰囲気の中、検討が行われている。棋譜解説チャットの飯島七段も、「安全な手もある中でこの見切りの手順ですから、渡辺竜王はもうほとんど読み切っているのではないかと思います」と語る。いっぽう、対局室では羽生名人が工夫を凝らして渡辺竜王の玉に迫っている。果たして後手が勝っているのか、まだ明快な結論は出ていない。

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(控え室での検討。森下九段=左、島九段=右)

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(ロビーに用意されたテレビには、多くの視線が集まる)

(文)

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(大盤解説役の鈴木大介八段)

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(聞き手の甲斐智美女王・女流王位)

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「羽生名人は非常に忙しいはずなのに、しっかりと最新型で戦っているんですよね。実は本局の▲6四歩から▲1五香の流れは、奨励会員で詳しく研究している方がいたんです。そんなことを知っている棋士はほとんどいないはずなのに……。どこから情報を仕入れてくるのでしょうか?」(鈴木大介八段)

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上の図は17時15分頃の局面。飯島七段はこの局面を「形勢判断ですが、私は後手65対先手35あたりになったのかなと思います。かなりわかりやすくなったのではないでしょうか。局面がすっきりした感じです」と、明確に後手よしとの判断を下している。
渡辺竜王はここから△3六銀と飛車を取り、以下▲3四歩△5九飛(下図)と進んだ。上の図から△3三金引と逃げる手も考えられたが、渡辺竜王は退かず、逆に強く踏み込む。羽生名人も金を取りつつ3四の急所に拠点を築けば、渡辺竜王は△5九飛と先手玉に狙いをつける。互いに相手玉の寄せを目指す激しい展開だ。

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「なるほど飛車を取って勝ちなんですね。これで勝ちなら簡単です。後手陣が危険かと思ってましたが、渡辺竜王の勝ちの時の踏み込みは鋭いです」(飯島栄治七段)

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(陽が落ち、外は暗くなり始めている)

(文)

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図は16時50分頃の局面。羽生名人が▲1三銀と銀を放り込んだところだ。タダの銀だが、△同玉には▲3六飛のお返しがある。6八角の睨(にら)みがあるので△3六同歩とは取れないのだ。控え室では、この手の評価はあまり良くない。「急いで攻めている印象があります」と森下九段。先手の攻めは無理筋なのでは、との声が出ている。

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(16時45分の対局室。△1四同歩(98手目)を着手する)

(文)