2019年10月の記事

2019年10月11日 (金)

深浦康市九段と上村亘五段が控室を訪れ、検討しています。ここまでの進行について聞きました。

「これが最前線の将棋なのですね。豊島さんの65手目▲2四桂は思いきった手で驚きました。対して広瀬さんは、玉を右にもっていくことで相手の攻めに空を切らせようとしています。豊島さんより時間を残していることから、入念な準備をしてきたことがうかがえます」(深浦九段)

「私は8七金の形が気になって、先手が指しづらいように見えてしまいます。現状は後手をもって指してみたいです」(上村五段)

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図からは、先手はどこかで1歩を持って攻めにいきたい、後手は少しずつ形をよくしていきたい、という方針で進むと予想されています。じりじりとした戦いが続くかもしれません。深浦九段は「すでに70手台に入っていますが、ここからの第二次の戦いが重要になってきます」と話していました。

Dsc_9719 (継ぎ盤に初手から並べていく)

Dsc_9725 (「一手一手が難しい将棋」と深浦九段)

Dsc_9733 (上村五段は昨日、四段昇段後100勝を達成して五段に昇段した)

竜王戦プレミアムでは65手目▲2四桂を受けて、中村太七段と高見七段が大盤で解説しています。解説会の1日目は和やかに進むことのほうが多いのですが、このときはどこかピリッとしていました。▲2四桂が会場の空気を変えたでしょうか。

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Dsc_9693 (中村七段)

Dsc_9684 (高見七段)

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14時5分、▲2四桂が指されました。いきなり牙をむく驚愕の一手。唯一、鈴木大介九段だけが「▲2四桂か▲2四歩だと思いました」と話していました。いずれにしても定跡形から一転、風雲急を告げる一手といえそうです。後手は図から△2二金や△2四同歩▲同歩△2二歩(△2二銀)が予想される対応です。


Dsc_9633 (さっそく継ぎ盤が動かされる。「▲2四桂はすごい手ですね」と佐藤康九段)

Dsc_9639_2 (鈴木大介九段が控室を訪れている)

Dsc_9653 (竹部さゆり女流四段も来訪)

Dsc_9534_2 (竹部女流四段の差し入れ)

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Dsc_9620 (手番の豊島名人は前傾姿勢で考えていた)

Dsc_9608(広瀬竜王は相手の手を待つ立場)

Dsc_9600(第1局だからか、能舞台のためか、両者とも今回は紋付だった)

Dsc_9584(広瀬竜王は竜王就位式のときと同じ服)

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12時30分、図の局面で豊島名人が27分使って昼食休憩に入りました。消費時間は▲豊島1時間44分、△広瀬1時間5分。昼食は広瀬竜王が鶏照り焼き重、豊島名人が国産牛の網焼きステーキ重、温野菜添え。対局は13時30分に再開されます。


Img_3341_2 (鶏照り焼き重)

Dsc_9481_2 (国産牛の網焼きステーキ重、温野菜添え、碗はお吸い物)

午前の控室、いまは中村太地七段と高見泰地七段がいます。高見七段はNHKの「将棋フォーカス」の司会を務め、中村七段は同番組で「太地隊長の角換わりツアー」という講座を担当している縁があります。

【竜王戦第1局、序盤からハイペースで進む(動画あり)|読売オンライン】
https://www.yomiuri.co.jp/igoshougi/ryuoh/20191011-OYT1T50198/

1011_063_2図は12時ごろの局面。すでに63手まで進んでいますが、本格的な戦いはまだ始まっていません。ここからは中盤戦入りを見据えて、手の進みが遅くなると思われます。どちらが主導権を握るのかが午後の戦いに注目ポイントです。


Dsc_9472 (継ぎ盤の前で午前の進行を振り返る)

Dsc_9473 (高見七段は竜王戦プレミアムに出演する)

竜王戦プレミアムのトークショーは、島九段から佐藤康九段に交代しました。佐藤康九段は自身の経験から、「いちばん調子のいい棋士が挑戦者になる。一方、タイトル保持者は第1局、第2局と対局を重ねながら調子を上げていく」と話していました。

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トークショーが始まる前に、第7期竜王戦七番勝負について佐藤康九段に聞きました。

竜王戦七番勝負が竜王-名人の対決となるのは今回で5回目。過去の戦績は2勝2敗です。1回目は1994年の第7期竜王戦、前年に初タイトルとなる竜王を獲得した佐藤康光竜王に、五冠を保持していた羽生善治名人が挑戦しました。第1局のパリ対局から羽生名人が3連勝、佐藤竜王も2勝を返しましたが、第6局が決着局となり、羽生竜王名人(六冠)が誕生しました。羽生七冠が誕生したのは、その2年後の1996年です。

「当時は羽生さんがタイトル戦で勝ち続けていました。一方、私は竜王を獲ったあと、それほど実績を挙げていませんでした。タイトルを獲ってから生活パターンが変わり、勝率も将棋の精度も落ちていました。ですから防衛というよりも挑戦する気持ちでしたが、竜王と名人という最高峰の戦いですから、それに恥じない戦いをしようという気持ちはありました。結果は残念でしたが自分のベストは尽くせたと思います。今回、広瀬さんと豊島さんがどういう戦いをするのか、私も注目しています」(佐藤康九段)

最近のタイトル戦は、挑戦者の奪取が続いています。2018年度に豊島名人が棋聖を奪取して以降、11回のタイトル戦で防衛したのは渡辺明棋王だけです。あらためて防衛の難しさを感じます。広瀬竜王は2011年度の第52期王位戦に続く、2度目の防衛戦で初の防衛を目指します。豊島名人は挑戦者が奪取する流れに乗って二冠復帰なるか。

2018年
 名人 防衛
 棋聖 奪取(豊島棋聖初タイトル、タイトル保持者が8人に)
 王位 奪取(豊島将之二冠達成)
 王座 奪取
 竜王 奪取(広瀬竜王誕生、羽生善治九段が無冠に)
 王将 奪取(渡辺明二冠達成)
 棋王 防衛
2019年
 叡王 奪取(永瀬拓矢叡王初タイトル)
 名人 奪取(豊島将之三冠達成)
 棋聖 奪取(豊島名人が棋聖を失い渡辺明三冠達成)
 王位 奪取(豊島名人が王位を失い一冠に)
 王座 奪取(永瀬拓矢二冠達成)
 竜王