本局は先手の羽生竜王が矢倉志向の立ち上がりを選びました。千葉七段は序盤の▲7八金(11手目)に注目します。
「飛車先交換を保留していることで、△6四歩と突きにくくしている意味があります。▲2四歩△同歩▲同飛から▲3四飛で歩を狙う筋があるので。本譜は△8五歩を見て▲5六歩でしたが、こういう流れの将棋はこれまでなかったと思います」
広瀬八段が△5五同角(32手目)と5筋の歩を交換したところで、羽生竜王は▲2四歩△同歩▲2五歩と継ぎ歩で反撃しました。「▲4六銀も自然で、それなら激しい攻め合いになりそうでした」と千葉七段。
羽生竜王の▲2七角(49手目)が決断の一着で、盤上に大きな動きがありました。飛車の利きを止める位置への角打ちは意表を突きます。千葉七段は「もう少し駒組みが続くのかと思ったんですが……。▲1八角が自然ですが、▲1六角の余地がある分、得ということですね。本局の命運をかけた一手になると思います」と話します。
17時30分、この手を見た広瀬八段が長考に沈んでいます。封じ手の定刻は18時。控室では田中寅九段が封じ手の準備を進めています。