感想戦後、広瀬新竜王の記者会見が行われました。
――今期七番勝負を振り返りながら、あらためて竜王奪取の感想を。
広瀬 連敗スタートになってしまい、羽生さんの指し回しに対応できないままズルズルいってしまう可能性もあると思っていました。第3局、第4局は逆転勝ちに近い内容だったが、そこで星を五分に戻せたことが、落ち着きを取り戻すきっかけになったと思います。後半戦は注目度の高さを感じたが、最後は幸いした。いまはうれしい気持ちでいっぱいです。
――2010年に王位を獲得したときと、どのような変化があったか。
広瀬 王位を獲得したときは四間飛車穴熊という戦法が軸になっていて、23歳という若さに任せて指していたところがありました。今回は指す戦法がまったく違うので、前回とはまったく違った実績を挙げたように感じています。
――羽生さんに勝てたことについて。
広瀬 羽生さんからタイトルを取らないと一人前として認められない、という視線を感じていました。今回、羽生さんからタイトルを取れたことは自信になりましたね。
――この1年を振り返って。
広瀬 朝日杯将棋オープン戦の決勝では藤井聡太さんと当たり、今回は羽生さんと七番勝負を指しました。将棋界の枠を超えたスター棋士と指すことは大変な思いもありましたが、自分の将棋に集中していい内容をお見せできればと思っていました。竜王戦では結果が出せてよかったです。
――本局で勝ちが近づいてきたときの心境は。
広瀬 対局中は特にプレッシャーを感じていると、自分でもわかっていました。ただ、盤上では最善手を求めていたので、それほど関係なかったです。勝ちになったと思ってから長い時間が過ぎて、タイトルを取ることの重みを肌で感じました。
――北海道のファンに向けて。
広瀬 北海道の方々には日ごろお世話になっていて、タイトルに縁がない時期も応援していただきました。今回勝てたのは皆さんのおかげとあらためて感じています。
――奥さまについて。
広瀬 妻は将棋ファンでもあるが、内容に関しては触れてこないです。今回は対局が多く忙しい時期ではありましたが、対局に専念できる環境を作ってくれたので、感謝しています。
――いま思い描いている目標は。
広瀬 タイトルをまだ防衛したことがないので、初防衛は目標のひとつ。またトッププロの条件にはいろいろな棋戦で活躍することがあるので、さまざまなタイトル戦に出られるようにしたいです。
(写真=紋蛇、書き起こし=文)