羽生棋聖の△7七桂打に、控室では谷川浩司九段の妙手△7七桂を懐かしむ声が上がりました。
△7七桂が指されたのは、1996年10月の第9期竜王戦七番勝負第2局▲羽生善治竜王-△谷川浩司九段戦です。
同年2月、第45期王将戦七番勝負第4局で、羽生竜王・名人は谷川浩司王将を破り、七冠独占の偉業を成し遂げていました。同年7月、第67期棋聖戦五番勝負第5局で三浦棋聖が誕生し、七冠独占は167日で幕を降ろしたものの、竜王戦で谷川浩司九段を迎え撃ったときは六冠を保持していました。
▲6三馬に△同飛は、▲同飛成で先手よし。6筋突破を狙われて後手がピンチに見えますが、谷川九段はすさまじい切り返しを放ちます。
▲6三馬以下、△5九角▲6九飛△7七桂と進みました。
飛車取りと角取りを手抜き、7七に桂を放ったのが妙手。▲7七同桂は△7六歩とし、次の△7七歩成の当たりがきつくなるので、後手の攻めが加速します。
実戦の進行は、▲5九飛△6三飛▲5四角△6八角です。
またも飛車取りを手抜いて、谷川九段は鋭く踏み込み、勝利を収めました。シリーズも4勝1敗で制し、第4期以来の竜王位を獲得。復位と同時に無冠返上を果たしました。
先手:羽生善治竜王
後手:谷川浩司九段
▲7六歩 △8四歩 ▲2六歩 △3二金 ▲7八金 △8五歩
▲7七角 △3四歩 ▲8八銀 △7七角成 ▲同 銀 △4二銀
▲3八銀 △7二銀 ▲1六歩 △1四歩 ▲4六歩 △8三銀
▲4七銀 △8四銀 ▲9六歩 △3三銀 ▲6六歩 △4二玉
▲6五歩 △7四歩 ▲6八飛 △7三銀 ▲3六歩 △5二金
▲3八金 △3一玉 ▲5六銀 △4四歩 ▲4七金 △4三金右
▲3七桂 △5四歩 ▲6九玉 △5二飛 ▲7九玉 △5五歩
▲6七銀 △2二玉 ▲8八玉 △9四歩 ▲6六銀直 △9三香
▲6一角 △6二飛 ▲8三角成 △9二角 ▲同 馬 △同 飛
▲2五桂 △4二銀 ▲4五歩 △同 歩 ▲5五銀 △2四歩
▲6四歩 △同 歩 ▲5六金 △2五歩 ▲6四銀 △5五歩
▲同 銀 △7五歩 ▲4四歩 △3三金寄 ▲5四角 △7六歩
▲同 銀 △7五歩 ▲8一角成 △6二飛 ▲6三馬 △5九角
▲6九飛 △7七桂 ▲5九飛 △6三飛 ▲5四角 △6八角
▲5八飛 △8九桂成 ▲同 玉 △7六歩 ▲6八飛 △同飛成
▲同 金 △7七銀 ▲6三飛 △8八飛 ▲7九玉 △6八飛成
▲同飛成 △同銀不成 ▲同 玉 △3八飛 ▲6七玉 △7七金
▲6六玉 △6八飛成 ▲7五玉 △6三桂
まで106手で後手の勝ち