2015年10月29日 (木)

前夜祭(4)

対局者が中座し、森下九段と富岡八段が明日の見どころを語りました。

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森下 みなさん、あらためまして。森下でございます。明日の見どころなんですが、いかがでしょう。忌憚のない意見を。

富岡 森下さんと私はつき合いが長いですね。

森下 37年前の奨励会同期でして、そのとき奨励会担当幹事だったのが、青野照市、当時五段でした。

富岡 今日は全員集合ですね。

森下 考えてみれば、そのころ、渡辺さんも糸谷さんも生まれていなかったんですね。

富岡 あのころは、まだ竜王戦もなかったですね。

森下 竜王戦ができましたのが、昭和62年なんですね。私が初めて北海道にうかがった年です。十段戦というのが竜王戦の前身の棋戦でして、当時は十段リーグというのがあったんです。これが6人のリーグなのですが、先後、2局で10局指して、優勝者がときの十段に挑戦するというシステムで。若手にとっては夢の十段リーグだったのですが、ついに入れませんでした。富岡先生は?

富岡 私は十段リーグ入りの決勝で敗れたことがあります。夢の十段リーグが夢の竜王戦になりました。森下さんは夢の竜王戦で挑戦者になったじゃないですか。

森下 負けちゃいました。それも24年前です。平成3年(第4期竜王戦)ですかね。当時25歳で、ときの竜王、谷川(浩司)先生に挑戦したのですが、あっさり一蹴されちゃって。

富岡 竜王戦は厳しいですよね。私は決勝トーナメントに2度入ったのですが、あっさりやられてしまって。

森下 決勝トーナメントに入るだけでも、ものすごく大変なんですよね。今回、糸谷さんは初の防衛戦です。勝てば糸谷時代が何年も続くかもしれませんが。

富岡 渡辺さんはあきらかに最強の挑戦者ですよね。これ以上ないという挑戦者です。

森下 渡辺さんは2年前に森内さんに獲られてますから、10連覇を逃しているんですよね。ぜひ、そのかたきを取ろうと思っているでしょうから、楽しみな勝負です。大先輩の内藤國雄九段がおっしゃったのですが、将棋は「勝つと強くなる、負けると弱くなる」と。私も痛いほど経験しているので(笑)。

富岡 糸谷さんは最強の竜王戦で防衛すると、本当にオーラが出てきます。オーラが出てくると、将棋というのは恐ろしいゲームで、自分は強くなるから、ドンドン手が伸びるし、相手の手はドンドン引っ込んでいくので、勝ちやすくなるんですね。

森下 糸谷さんとして、今期は是が非でも防衛しようと思っているでしょうから。戦型ですが、直感は角換わりですね。

富岡 角換わりシリーズだと思ったのですが、第1局は横歩取りでしたね。第2局は糸谷さんが先手。▲7六歩に渡辺さんは△8四歩とくるよね。そこで▲2六歩。

森下 横歩取りの可能性はありますが、7割方、角換わりかなと。

富岡 そうですね。7-3で角換わりですね。

森下 渡辺さんも何の準備もなく、受けるわけはありませんし、気合負けして戦型を避けて指すこともないでしょう。気合と意地のぶつかり合いでしょうから、われわれも楽しみにしたいですね。

(写真=紋蛇、文章=吟)