花束贈呈のあとに対局者が意気込みを述べました。
(糸谷竜王)
「みなさん、こんばんは。ご紹介にあずかりました糸谷です。私事で恐縮ですが、私は初めて黒部市に来させていただきまして、話題の北陸新幹線も初めて乗ることができました。黒部市、特に宇奈月は山が美しく、感銘を覚えました。私の実家は山のふもとといいますか、山を切ってできた場所なのですが、そこを思い出すような場所で懐かしみを覚えました。対局室からも山が見えまして、このような場所で対局させていただけて光栄に思います。黒部市様、日本将棋連盟富山県支部連合会様、読売新聞社様、本当にありがとうございます。
今回は私にとって1年ぶりのタイトル戦です。去年、竜王を獲得したときに『来年の竜王戦までに、できればほかのタイトル戦にも出たい』と話した記憶があります。いまとなっては少し恥ずかしいことになってしまいましたが、竜王戦という最高の舞台で、これまで以上にいい将棋を指したいと思っています。
私にとっても気になりますのが、読売新聞に掲載された竜王戦の展望記事です。みなさまも気にかけてくださっていると思うのですが、果たして自分の実力はいかほどのものかと。自分で考えてもラチがあかないので、仲のよい棋士や奨励会員に飲み会の席で聞いてみたのですが、0-4、1-4、2-4(で竜王失冠)と言われまして、どうやら聞く相手を間違えました。
実績、実力ともに私よりも上の渡辺先生が相手ということで、形としては防衛戦になりますけれども、挑戦する気持ちを忘れずに頑張っていきます。どうぞよろしくお願いします」
(渡辺棋王)
「みなさま、あらためまして、こんばんは。本日はこのように盛大に前夜祭を催していただきまして、また、多くの方にお越しいただきまして、ありがとうございます。主催の読売新聞社様、地元の黒部市のみなさまに厚く御礼申し上げます。
こちらでは何度も対局させていただいているのですが、北陸新幹線が通ってからは初めてになります。東京からだと移動時間が1時間ほど短くなったでしょうか。観光などでますますご発展を遂げられるかと思います。
宇奈月温泉では竜王戦を含めて何度も指しているのですが、聞いたところによると自分は相性がよくないそうです。自分ではあまり覚えていないのですが、竜王戦に限ると当地で一度も勝っていないと聞きました。ただ、個人的には、温泉、海の幸、山の幸など、対局するにはうってつけの場所だと思っていますので、ここで開幕戦を指せることを大変うれしく思っています。今回、2年ぶりに竜王戦七番勝負に出場することができました。自分が長く持っていたタイトルですので、もちろん愛着があります。
私も31歳になりました。いままでは、羽生さん、森内さん、佐藤さんたちと竜王戦を戦ってきましたが、そういった年上の棋士とタイトル戦を指すのが常でした。糸谷さんは27歳で私より年下です。年下の棋士とタイトル戦を指すのは今回が初めてです。自分がタイトル戦に出させていただくようになってから11~12年になります。振り返ってみると、あっという間でした。棋士としてタイトル戦に出られる折り返し地点、というと申し訳ないんですけど、そういった節目の時期に入りつつあるのか、これから自分がどれだけタイトル戦に出られるのかと、そういったことも考えます。
今回は貴重なチャンスですので、頑張りたいと思います。糸谷さんと私はタイトル戦では初顔合わせです。ファンのみなさまに注目していただいていると思うので、竜王戦という最高峰の舞台を盛り上げていければと思っています。どうぞよろしくお願いします」
(書き起こし=牛蒡、写真=銀杏)