2015年10月の記事

2015年10月15日 (木)

20151015_asa10 (8時53分、杉本三段が振り駒を行う。と金が3枚出て渡辺棋王の先手に決まった)

20151015_asa12 (先後が決まってから対局開始まで7分近い時間があった。二人でお茶を飲む)

20151015_asa11 (脇息の下に時計を置くのが渡辺流)

20151015_asa5 (8時44分ごろ、糸谷竜王が対局室へ)

20151015_asa6 (襟が乱れていたようで、気づいた谷川浩司九段が直す)

20151015_asa7 (8時50分、渡辺棋王が対局室へ)

20151015_asa8 (糸谷竜王が駒袋を開ける)

20151015_asa9 (両者大橋流で並べる)

20151015a振り駒の結果、と金が3枚で渡辺棋王の先手になりました。注目されていた戦型は糸谷竜王が意表を突いて横歩取りに誘導しました。糸谷竜王が後手で横歩を取らせるのは公式戦で初めてのことです。
意表を突くといえば、渡辺棋王の初防衛戦だった第18期竜王戦七番勝負第1局で木村一基七段(現八段)を相手に、意表の一手損角換わりを用いたことを思い出させます。ちなみに、そのときの新聞解説も本局と同様に藤井猛九段でした。
第18期竜王戦七番勝負第1局

2015年10月14日 (水)

対局者は意気込みを述べたあとに退室。谷川九段、大内九段、藤井九段が対局の見どころを述べました。

20151014_zenyasai16 (谷川九段)
「今日は会長としてあいさつして仕事が終わったと思ったのですが、ここからは棋士九段としての仕事となります。
対局者のお二人は角換わりという角交換する将棋を得意にしています。七番勝負はこの戦法が主力になると思います。その中で、渡辺さんは最新形で理論的に筋道を立てるのに対して、糸谷さんは力将棋ですね。いままでにない形で乱れれば乱れるほど力を出すタイプですので、どちらの土俵になるかで変わってくることでしょう。
先ほどNHKの取材を受けたのと同じ内容になってしまうのですが、渡辺さんは挑戦者になるくらいですから調子はいいですが、糸谷さんの方が…初めてタイトル取った方は1年調子をつかめないことがあるのですが、不本意な形で竜王戦を迎えたとは思います。糸谷さんは挑戦者の気持ちで臨むという思いに偽りはないと思いますが、第2局までに1勝して調子を上げていきたい気持ちが強いのではないかと思います」

20151014_zenyasai17 (大内九段)
「私もファンのみなさんと同じ気持ちで明日からの対戦を楽しみにしている者の一人です。糸谷さんの将棋を見ていると、非常に決断や思いきりがいいんですね。それが渡辺さんに通じるかどうかが見どころと思います。
タイトル戦を控えて、相手の棋譜を徹底的に調べていると思います。プロはそういう準備がないと、なかなかこういう勝負に臨めません。対局者は相手のいいところ、弱点、あるいは未知数のところを見つめながら、明日は対局するのではと思います。
私も楽しみでして、初心にかえって盤側に座っていようと思っています」
20151014_zenyasai18 (藤井九段)
「明日からの注目の番勝負です。立会人だけでなく解説会にも何回か顔を出して、対局と同時進行で解説すると思いますので、ぜひお越しいただければと思います。
対局が始まれば私もいろいろ解説できますが、対局前なので何を話せばいいか難しいですね。まず、お二人の今日の顔を見ると、非常に緊張しています。そばで見ていて、なんでこんなに緊張しているんだろうというくらいです。目も合わせないくらいで。特に糸谷さんの方は非常に謙虚で、タイトルホルダーでありながら先輩にぶつかる決意を述べられていて、そうなるのではないかと思います。対する、竜王戦で実績抜群の渡辺棋王の方が、挑戦者でありながら年下にはちょっと負けられないという、気負いといいますか意識の高さを感じました。ちょっと硬く見えましたね。それらがどのように番勝負に影響するかが見どころと思います。
番勝負は1局目が流れを決める大事な一戦になります。両対局者の調子をみる上で注目していただきたいと思います。戦型予想は、私は振り飛車党なのではっきりいって分かりません。始まってみてのお楽しみですね」

花束贈呈のあとに対局者が意気込みを述べました。

20151014_zenyasai14 (糸谷竜王)
「みなさん、こんばんは。ご紹介にあずかりました糸谷です。私事で恐縮ですが、私は初めて黒部市に来させていただきまして、話題の北陸新幹線も初めて乗ることができました。黒部市、特に宇奈月は山が美しく、感銘を覚えました。私の実家は山のふもとといいますか、山を切ってできた場所なのですが、そこを思い出すような場所で懐かしみを覚えました。対局室からも山が見えまして、このような場所で対局させていただけて光栄に思います。黒部市様、日本将棋連盟富山県支部連合会様、読売新聞社様、本当にありがとうございます。
今回は私にとって1年ぶりのタイトル戦です。去年、竜王を獲得したときに『来年の竜王戦までに、できればほかのタイトル戦にも出たい』と話した記憶があります。いまとなっては少し恥ずかしいことになってしまいましたが、竜王戦という最高の舞台で、これまで以上にいい将棋を指したいと思っています。
私にとっても気になりますのが、読売新聞に掲載された竜王戦の展望記事です。みなさまも気にかけてくださっていると思うのですが、果たして自分の実力はいかほどのものかと。自分で考えてもラチがあかないので、仲のよい棋士や奨励会員に飲み会の席で聞いてみたのですが、0-4、1-4、2-4(で竜王失冠)と言われまして、どうやら聞く相手を間違えました。
実績、実力ともに私よりも上の渡辺先生が相手ということで、形としては防衛戦になりますけれども、挑戦する気持ちを忘れずに頑張っていきます。どうぞよろしくお願いします」

20151014_zenyasai15 (渡辺棋王)
「みなさま、あらためまして、こんばんは。本日はこのように盛大に前夜祭を催していただきまして、また、多くの方にお越しいただきまして、ありがとうございます。主催の読売新聞社様、地元の黒部市のみなさまに厚く御礼申し上げます。
こちらでは何度も対局させていただいているのですが、北陸新幹線が通ってからは初めてになります。東京からだと移動時間が1時間ほど短くなったでしょうか。観光などでますますご発展を遂げられるかと思います。
宇奈月温泉では竜王戦を含めて何度も指しているのですが、聞いたところによると自分は相性がよくないそうです。自分ではあまり覚えていないのですが、竜王戦に限ると当地で一度も勝っていないと聞きました。ただ、個人的には、温泉、海の幸、山の幸など、対局するにはうってつけの場所だと思っていますので、ここで開幕戦を指せることを大変うれしく思っています。今回、2年ぶりに竜王戦七番勝負に出場することができました。自分が長く持っていたタイトルですので、もちろん愛着があります。
私も31歳になりました。いままでは、羽生さん、森内さん、佐藤さんたちと竜王戦を戦ってきましたが、そういった年上の棋士とタイトル戦を指すのが常でした。糸谷さんは27歳で私より年下です。年下の棋士とタイトル戦を指すのは今回が初めてです。自分がタイトル戦に出させていただくようになってから11~12年になります。振り返ってみると、あっという間でした。棋士としてタイトル戦に出られる折り返し地点、というと申し訳ないんですけど、そういった節目の時期に入りつつあるのか、これから自分がどれだけタイトル戦に出られるのかと、そういったことも考えます。
今回は貴重なチャンスですので、頑張りたいと思います。糸谷さんと私はタイトル戦では初顔合わせです。ファンのみなさまに注目していただいていると思うので、竜王戦という最高峰の舞台を盛り上げていければと思っています。どうぞよろしくお願いします」

(書き起こし=牛蒡、写真=銀杏)

20151014_zenyasai11 (左から記録係の杉本和陽三段、新聞解説の藤井猛九段、渡辺棋王、糸谷竜王、立会人の大内延介九段)

20151014_zenyasai12 (記念品として、地元黒部市の大吟醸「幻の瀧 飛雪」が贈られた)

20151014_zenyasai13 (花束贈呈)

18時から前夜祭が行われました。

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20151014_zenyasai2 (大野茂利・読売新聞東京本社執行役員北陸支社長のあいさつ)
「いよいよ第28期竜王戦七番勝負が開幕となります。宇奈月での竜王戦は4回目となりますが、第1局は宇奈月はもちろん、北陸でも初めてのことです。新しい竜王になられて連覇を目指す糸谷竜王、かつて9連覇を成し遂げた渡辺棋王、注目の対局を宇奈月で迎えられることを主催者としてうれしく思っています。と申しますのも、北陸では約半世紀の悲願とされてきた北陸新幹線が開業して、国内外からの観光客でにぎわっており、宇奈月でも観光客が4割近くも増えているとお聞きします。立山の山頂は雪で真っ白になってきていまして、徐々に紅葉も始まっています。秋の観光シーズンで注目されている時期です。
また、地元の黒部市は平成の大合併から10周年。新庁舎も完成して、10日には記念式典も行われました。新しいスタートの年であります。そういう年に注目の対局を迎えられることを本当にうれしく思います。糸谷竜王は昨年、金沢で竜王になられたということで、北陸は縁起のいいところだと思います。渡辺棋王にとっても竜王戦は縁のある棋戦ですし、思い入れも強いとうかがっております。期すものも大きいのではないかと思います。名勝負が展開されることを期待しております。
北陸は将棋ファンが多く、この対局を楽しみにしておりました。対局以外にも、大盤解説、指導対局、サイン会など、いろいろなイベントがありますので、ファンのみなさまも存分に楽しむことができると思います。緊迫した対局を前に短い時間ではありますが、今日は酒と料理で宇奈月の夜を楽しんでいただければと思います」

20151014_zenyasai3 (中谷延之・黒部市副市長)
「ただいま市長は海外出張中でございまして、メッセージを預かってまいりました。紹介させていただきます。
『今春3月に北陸新幹線が開業いたしまして、春以来、多くの観光客が訪れて、にぎわいを増しております宇奈月温泉を舞台に、将棋界で最高のタイトル戦であります第28期竜王戦が開催されることを大変よろこんでおります。今年は黒部市新市制10周年の年でもあり、しかも竜王戦第1局の開催は北陸では初めてであるとのこと、大変に意義深いことだと思っております。宇奈月対局の開催におきまして、ご尽力をたまわりました関係者のみなさまに心から感謝を申し上げます。
糸谷竜王と渡辺棋王には、明日の大一番を控えまして、リラックスとはいかないまでも、海の幸、宇奈月温泉の湯、人情、おもてなしに触れていただきたいと思っております。竜王戦は段位や年齢に関係なく挑戦できることもあり、これまで幾多の名勝負が繰り広げられてきたと聞いています。明日も歴史に残る対局になりますことを期待しております。
結びになりますが、本日お集まりのみなさまの今後のご発展を祈念申し上げて、歓迎のあいさつとさせていただきます。平成27年10月14日、黒部市長、堀内康男』」

20151014_zenyasai4 (谷川浩司・日本将棋連盟会長のあいさつ)
「私事ですが、宇奈月温泉に来るのは3回目になります。最初は観光でまいりまして、トロッコ電車に乗ったり、アルペンルートを楽しんだりしました。2回目は対局、3回目が今日です。北陸新幹線ができて本当に便利になりました。
糸谷竜王は大阪から、渡辺棋王は東京からまいられたのですが、タイトル戦開始の緊張感の中にも、ちょっとワクワクした旅行気分で来られたのではないかと思います。竜王戦を通じて、黒部、宇奈月を全国的にアピールできればと思っております。
今期の竜王戦は、糸谷竜王と渡辺棋王という、本当に楽しみなカードになりました。昨年、糸谷竜王のタイトル獲得は衝撃的でありまして、新しい時代が来たことを実感する出来事でした。それから1年、防衛戦を迎えてどのような戦いを見せてくれるのか、楽しみにしております。渡辺棋王は唯一の永世竜王資格保持者でありますので、挑戦者になったというよりも、七番勝負の場に戻ってきたというほうが正しいかもしれません。渡辺棋王は竜王獲得10期もかかっております。
現地では明日、明後日と解説会があり、土曜日にはイベントも開催されます。タイトル戦の初日の解説会は、通常ですと、のんびりしたところもあるものなのですが、お二人は早見え早指しですので、初日から目が離せない将棋になると思いますので、将棋ファンのみなさまには、ぜひ明日から解説会にお越しいただきたいと思っております。今期の竜王戦七番勝負が素晴らしいシリーズになることを期待しまして、簡単ではありますが、ごあいさつとさせていただきます」

20151014_zenyasai5(村上義和・日本将棋連盟富山県支部連合会会長のあいさつ)
「宇奈月で竜王戦が行われると聞いてから、いまかいまかと待ち望んでいたのですが、ようやく明日から行われることになりました。竜王戦の富山対局は今回も含めて11回目になります。ほかの県の方からうらやましがられたこともあります。これもすべて読売新聞社さまや日本将棋連盟さまのご厚意だと思っております。本当に感謝申し上げます。
将棋ファンのみなさまには、阿久津八段と井道女流初段の解説で将棋を勉強していただければありがたいと思っております。私も会場でワクワクしながら観戦しようと思っています。第1局ということで糸谷竜王も渡辺棋王も気合が入ることかと思います。お二人の活躍を願っております」

20151014_zenyasai6 (辻靖雄・黒部市議会副議長が乾杯の音頭を取った)
「黒部で竜王戦を開催していただけるのは最高の喜びであります。北島三郎の『歩』という歌に「と金で大暴れ」という一節があるのですが、第1局はそのような息詰まる一戦になるのではないかと、本当にワクワクしております。それではお二人の健闘を期待いたしまして、杯を上げたいと思います。乾杯!」

20151014_zenyasai7 (乾杯!)

(書き起こし=牛蒡、写真=銀杏)