藤井九段といえば第11期~第13期の竜王。掲載棋譜は藤井が3連覇を達成した第13期竜王戦第7局。8六の歩が最後の最後で明暗を分けた。将棋世界(2001年3月号)に観戦記「一歩竜王」を寄せた先崎学(現・九段)は将棋ペンクラブ観戦記部門の部門賞を受賞した。
第13期竜王戦七番勝負第7局
平成12年12月25日
於・神奈川・鶴巻温泉・陣屋
持ち時間 ▲竜王 藤井 猛
各8時間 △五冠 羽生 善治
▲7六歩 △3四歩 ▲6六歩 △8四歩 ▲6八飛 △6二銀 ▲1六歩 △1四歩
▲3八銀 △4二玉 ▲7八銀 △3二玉 ▲6七銀 △5二金右▲4八玉 △5四歩
▲3九玉 △5三銀 ▲4六歩 △7四歩 ▲2八玉 △8五歩 ▲7七角 △2四歩
▲5八金左△2三玉 ▲3六歩 △3二銀 ▲2六歩 △7二飛 ▲7八飛 △4四歩
▲4七金 △4三金 ▲3七桂 △4二銀 ▲8八飛 △7三桂 ▲5六銀 △3三銀右
▲2七銀 △3一角 ▲3八金 △9四歩 ▲6五歩 △5五歩 ▲同 角 △5四金
▲4五歩 △同 歩 ▲6六角 △4四銀 ▲4六歩 △2二角 ▲4五歩 △5五銀
▲同 銀 △同 金 ▲同 角 △同 角 ▲9八飛 △8六歩 (左図)
▲2五歩 △同 歩 ▲5六金 △2二角 ▲4四歩 △同 角 ▲4五金 △4二飛
▲3四金 △同 玉 ▲4五銀 △2三玉 ▲2四歩 △1二玉 ▲2三金 △同 銀
▲同 歩成△同 玉 ▲4三歩 △5二飛 ▲4四銀 △5七飛成 ▲2四銀 △3四玉
▲3五銀右△2三玉 ▲4二角 △同 金 ▲同 歩成△6六角 ▲8六歩 (右図)
右図の▲8六歩と歩を取った手が先手の藤井竜王にとって大きな一歩。当時の将棋世界誌に掲載された先崎学(現・九段)の観戦記をやや長いが引用したいと思う。
「▲8六歩。驚くなかれ、この辺境の一歩を駒台に置いた瞬間、後手玉には受けがなくなった。一歩、いつも突き捨てたり打ち捨てたりしてぞんざいに扱っている一歩。しかし藤井には竜王を得るための命の一歩だった。まるで砂漠のオアシスのように、それは、そこにあった。ひっそりとおくゆかしくあった」
△1二玉 ▲2四歩 △2二金 ▲4三銀不成△3七竜 ▲同 金 △3九角打 ▲2九玉
まで、101手で藤井猛竜王の勝ち。 (消費時間=▲7時間51分、△7時間59分)