2013年10月28日 (月)

同じ形の表裏

Kifu_18

先手の渡辺竜王が矢倉を目指すと、後手の森内名人は△5三銀右(図)と上がった。序盤からリードを奪いにいく積極的な作戦だ。興味深いことに、これは第1局で渡辺竜王が指した作戦。それだけに、森内名人の「先後どちらを持っても勝ちますよ」という意志の表れともとれる。思い返せば、今春に行われた第71期名人戦七番勝負でも、森内名人は挑戦者・羽生善治三冠を相手に第1局、第2局と(こちらは相掛かりだが)同じ形の表裏を持って連勝していた。本局で森内名人が勝てば、一局の勝利にとどまらず、シリーズ全体に与える影響は大きくなるだろう。渡辺竜王はこの手を見て、険しい表情でじっと考え込んでいる。