図は50手目△8四角の局面。控室では▲6六銀右△7三桂▲4九飛△4二金上▲1七桂(参考1図)として、自分から動いていく順が検討されていました。
しかし、森内名人の指し手は▲8六歩。これは上部開拓を見せることで、後手から無理に動いてもらおうとしています。後手は5一金が離れているのが負担になる恐れがあります。
▲8六歩に検討されていたのは△7三桂▲8五歩△9三角▲6六銀左(参考2図)というもの。参考2図の▲6六銀左は玉から離れて変なようでも、▲6六銀右では△6五桂▲8六銀△6六角▲同金△5七銀(参考3図)の強襲を食って先手失敗です。先手は自玉方面で動いているだけに、このように二人が借りで先手陣を攻める展開だけは避けねばなりません。
その後、詳しく検討してみると、参考2図から△8二飛▲9五歩△6五桂▲同銀△8五飛▲8六歩△6五飛▲9四歩(参考4図)で先手も十分戦えることが分かってきました。
それらの変化を踏まえて、実戦は▲8六歩に△同歩▲同銀△8二飛と進みました。地味ながら読み深い応酬でした。