図は16時30分過ぎ、△3四歩と打った局面です。ここで▲2四銀と逃げても後手の攻めが難しいと言われていましたが、森内名人は13分の考慮で▲5六歩!と攻めを催促しました。
以下、△3七角成▲同竜△3五歩▲2六竜。
後手が2枚換えに成功しましたが……。
「なるほど、これは局面を単純化させた手順ですね。△5七桂の筋はありますが、▲5八金右△6九桂成▲同玉で左辺に逃がしてしまいます。局面の考える要素が減り、先手の指し手がわかりやすくなったのではないでしょうか」(室岡七段)
持ち駒が増えた後手ですが、攻めの手段が限られていては緩急つけた技で逆転を狙うことができません。つまり、先手が一直線の寄せ合い(▲2一竜など)を選んだ際、負けだとわかっていてもそのレールに乗っかるしかない局面に進んでしまうかもしれないのです。
再び局面を複雑化させることができるかどうか、谷川九段の底力が問われています。