飯島七段に本局の総括をしていただきました。
「まず解説を見ていただいた皆様本当にありがとうございました。何から振り返ったら良いかわからない。矢倉の大熱戦の名局でした。まず本局は矢倉の最新型になりました。▲1五香(第1図)~▲6五銀と挑戦者の羽生名人が新しい攻め筋を披露しました。また封じ手の▲1三桂成は軽妙手でとても素晴らしい緻密な攻めの組み立て、羽生名人の棋風が出ていたと思います。
私が印象に残るのは渡辺竜王の(74手目)△9六歩(第2図)です。無理に攻めると先手に駒を渡しかねないのでまず考えない順です。それと何と言っても85手目の▲8四馬です。これもおどろました。働いている馬ですから、桂と交換はかなり得な変化がないと考えないからです。
93手目▲3四桂(第3図)と銀を取らないで▲5七角がかなり有力だったと思います。これなら羽生名人も戦えていたのではと思います。
優勢になってからの渡辺竜王踏み込みが素晴らしかったです。特に108手目▲3五歩と打った局面、私を含めてほとんどのプロ棋士がおそらく△3三金引とすると思います。そこから飛車を取って一直線に勝ちを目指しました。渡辺竜王らしい豪快な勝ち方です。最後は△8四桂からの攻めが決まり渡辺竜王が一手違いの大熱戦を制しました。いろいろな要素が盛り込まれたシリーズを代表する一局になったと思います」
2010年10月27日 (水)