2010年10月27日の記事
第1局、第2局を見ての立会人の印象
立会人の島九段と森下九段に第1局と本局を見ての感想をいただきました。
島九段「第1局、第2局と、羽生さんらしい手が出ているが、終盤で精彩を欠いた感じです。普段の迫力に妖しさがないかもしれない。短いスパンでなら、あることではあります。羽生さんは修正の早さが特徴ですから、これから立て直してくるでしょう。渡辺さんも、当然これからが勝負と見ているはずです」
森下九段「これまでの対局は、渡辺さんの勝ちたいという意志を強く感じます。渡辺さんが羽生さんの勝負手に臆することなく指している印象です。なかなかできないことです。逆に羽生さんに少し力みがあるかもしれません」
飯島七段の第3局の展望
「これで渡辺竜王の2連勝になりました。防衛に大きく前進した一勝になりました。しかし、第3局以降、羽生名人の巻き返しがあるのではないかと思います。一局一局、目が離せません。私も次局から興味深く観戦いたします。本日は皆様ご観戦本当にありがとうございました。横歩取りか1手損角換わりか、どちらも最新型が濃厚なのかと思います。何が起こるか分からない。今回同様、序盤から目が離せません。次は何としても落とせない一局になるでしょうから、本局以上の素晴らしい熱戦になると期待しています。羽生名人が今回先手番を落として追い込まれましたが、次の第3局、新たに後手番で工夫の新しい指し回しを見せるのではないかと思います」
飯島七段の総括
飯島七段に本局の総括をしていただきました。
「まず解説を見ていただいた皆様本当にありがとうございました。何から振り返ったら良いかわからない。矢倉の大熱戦の名局でした。まず本局は矢倉の最新型になりました。▲1五香(第1図)~▲6五銀と挑戦者の羽生名人が新しい攻め筋を披露しました。また封じ手の▲1三桂成は軽妙手でとても素晴らしい緻密な攻めの組み立て、羽生名人の棋風が出ていたと思います。
私が印象に残るのは渡辺竜王の(74手目)△9六歩(第2図)です。無理に攻めると先手に駒を渡しかねないのでまず考えない順です。それと何と言っても85手目の▲8四馬です。これもおどろました。働いている馬ですから、桂と交換はかなり得な変化がないと考えないからです。
93手目▲3四桂(第3図)と銀を取らないで▲5七角がかなり有力だったと思います。これなら羽生名人も戦えていたのではと思います。
優勢になってからの渡辺竜王踏み込みが素晴らしかったです。特に108手目▲3五歩と打った局面、私を含めてほとんどのプロ棋士がおそらく△3三金引とすると思います。そこから飛車を取って一直線に勝ちを目指しました。渡辺竜王らしい豪快な勝ち方です。最後は△8四桂からの攻めが決まり渡辺竜王が一手違いの大熱戦を制しました。いろいろな要素が盛り込まれたシリーズを代表する一局になったと思います」