最後に両立会人による見所が語られた。
飯塚七段「今期の棋聖戦はまだ横歩取りが出ていないので横歩取りかなと思います。二人の対戦では相掛かりが少ないので、相掛かりが第2候補です。ただ、羽生さんは立会人に合わせて戦型を決めるという伝説があるので、青野先生が得意にされている一手損角換わりになるかもしれません」
青野九段「たしかに横歩取りを出ていませんね。まあ、戦型というよりも、深浦さんは去年も0-3で負けてしまいました。もともと、深浦さんは羽生さんに強いと言われ、苦手にしていなかったのに負けが込んでいる。それを何とか返したいという気持ちが強いのではないか。深浦さんは九州での対局では強いんですよ。王位戦で3連敗した後、第4局が佐世保であり、それに勝ったのをきっかけに巻き返しました。地元では勝ちたいという気持ちが強く、それが空回りしないタイプなので、明日は素晴らしい将棋を指されるのではないでしょうか」
(吟)
・熊本の印象や縁について
「熊本は対局とプライベートを合わせて10回以上来ていると思います。火の国と言われていますから温暖な印象があります。2年前に熊本城で対局しましたし、今回は水前寺成趣園での対局ということで、歴史を重んじる場所だなと感じます」
・通算9期の棋聖を保持されており、3連覇中です。防衛に向けての意気込みを
「棋聖戦は今期が82期ということで一番多くやっているタイトル戦。1日制4時間というスピーディーな時間で行われる棋戦なので自分としては元気よく勢いのある将棋を指したいと考えています」
・深浦九段の印象を教えてください。
「えーっと、深浦さんが隣にいるところで言いづらいところもありますが、最新の形というか、たくさん研究をされている。中終盤も粘り強く、切れ味が鋭いので毎回大変な対局となっています」
・明日はどのような対局にしたいと思いますか。
「どうなるかはやってみないと分かりませんが、地元の皆さんが一生懸命に設営されてくださいましたので、来ていただいたファンが満足していただけるような対局を指したいですね」
・ファンへのメッセージをお願いします
「こちらに来て、日が長いので西日本に来たなと思いました。こちらの皆さんは人情味に厚く、将棋も盛んになってきています。今後もコミュニケーションの場として将棋を楽しんでほしいと思います」
・熊本の印象や、挑戦者になられた思いについてお聞かせください。
「熊本に初めて来たのはいまから27年前。12歳のときに小学生の修学旅行で来ました。そのときに熊本を回るということで、阿蘇山や熊本城といった勇ましい場所を見た後に水前寺成趣園にきて、子どもながらにこんなきれいな場所があるんだという感動を覚えました。まさか27年後に古今伝授の間で対局できるとは思いませんでした。感慨深いですね。熊本には愛和支部という女性のみの支部があり、そこの師範を務めています。3月に指導対局のおりに棋聖戦が熊本で行われることを知り、ぜひ熊本で戦いたいと思っていました」
・棋聖への意気込みをお聞かせください
「2年連続の挑戦ですが、昨年は結果が出ませんでした。今年もまだここまで結果出ていませんが、この前夜祭で気分を新たにして頑張ろうと思っています」
・以前読んだ本で、深浦九段が対局相手と対局することはその相手と恋愛することだという内容のことをおっしゃっていたと記憶しています。そういう意味での恋愛相手としての羽生棋聖はどんな相手ですか?
「隣にいらっしゃるので言いにくいですが、羽生さんの恋愛相手はたくさんいらっしゃいますが、私は棋聖戦にかけています」
・明日はどのような対局にしたいですか。
「第2局が千日手があったり、長手数の戦いだったりと自分らしさが出てきていると思います。明日はエンジン全開で頑張りたいですね」
・最後に熊本、九州のファンへのメッセージをお願いします。
「自分の持っている力を振り絞って指したいと思います。熊本は何度も訪れて親しみのある街です。棋聖戦を機に、九州の皆さんには産経新聞をよろしくお願いします」
(吟)
(山口昭・産経新聞社 九州・山口本部副本部長あいさつ)
「産経新聞は全国紙ですが、九州では2年前から現地印刷して
新参者のマスコミです。その意味でも熊本での開催はうれしい。
深浦九段は隣の長崎県佐世保市出身。羽生棋聖も隣の鹿児島
県にゆかりがある(先祖が種子島出身)ということを聞いており、
準ホームグラウンドの対局として思う存分に力を発揮されるので
はないかと思います。私も将棋ファンですので、当代きっての実績
や実力を持ち、研究家としても棋界でも指折りの二人が現代将棋
の神髄を発揮され、新定跡誕生の場にも立ち会えるのではないか
という期待をしております」。
(幸山政史・熊本市長あいさつ)
「将棋と熊本の関係を申し上げますと、2年前に熊本城の数寄屋
丸や完成したばかりの本丸御殿を使って名人戦を行いました。その
ときに羽生さんに対局していただきました。深浦九段もそのときは
副立会人として来られたと記憶しております。昨年は旧細川刑部邸を
使ってマイナビ女子オープンが行われました。今年は水前寺成趣園。
そして復元・改修を終えたばかりの古今伝授の間で対局していただく
こととなりました。
熊本の観光施設、歴史伝統文化の集約された場所で、対局していた
だくということは将棋ファンにとっても素晴らしいこと。熊本を全国に発
信するという意味でありがたい。ご協力された皆さんに感謝を申し上げ
ます」。
(田尻将博・熊本市議会副議長の祝辞)
「将棋を通じて、心を学ぶ取組も注目されているとうかがっております。
その中で、棋聖戦が熊本で行われることは大きなことと思い、ファンの
一人としても楽しみです。本局は観光施設であり、約100年ぶりに改修さ
れた古今伝授の間で開催されることは、注目を集めるだけでなく、記憶
に残る名勝負になることを期待しております」。
(村田親則・社団法人熊本青年会議所第57代理事長のあいさつ)
「熊本青年会議所は熊本の街づくりをするための団体です。近年は熊本城
や旧細川刑部邸での対局に協力し、日本の文化の継承に取り組んでいます。
そして、今回は古今伝授の間で対局されるということで、ご協力できればと思う。
今後も引き続き、熊本の地で小さなお子さんに夢を与えられるような大きな
対局を開催していただければ青年会議所としてバックアップしていきたい」。
(吟)