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図は▲2五桂に△2二銀と引いた局面。ここから深浦は▲1五歩と端に手をつける。一歩を入手しての▲7五歩が狙いだ。以下、△1五同歩▲同香△同香▲7五歩に△8三銀!
後手は端で香を手に入れているので、駒割は銀香交換。だが、守りの銀をはがして、普通に考えれば深浦がポイントをあげている局面といえる。
(△2二銀を着手する渡辺)
(棋譜を確認する深浦。午後6時ごろの対局室)
(文)
図は午後5時40分すぎの局面。深浦は左桂も端から活用し、後手の玉頭に襲いかかろうとしている。いっぽうの渡辺は遠く2八から馬を利かせ、簡単には倒れない姿勢。先手も一息に攻めつぶすのは容易ではないだろう。
徐々に指し手のペースが早まっている。図の1手前、△2八馬まで消費時間は▲深浦3時間13分、△渡辺3時間。
控え室で藤井九段と阿部四段が二人して何かを覗きこんでいる。画面を見ながら将棋の話をしているようだ。何が映っているのか……気になってカメラを近づけると、「撮っちゃだめだー」と藤井九段。「これには阿部君の研究会の将棋も入っている。(情報が漏れたら)選手生命に関わる」と力説する。
阿部四段の秘密研究、その裏側だけを特別に写す許可を得た。
(秘密兵器の……裏側)
(「選手生命に関わる」と必死に阿部四段を守る藤井九段)
(阿部四段。棋譜は携帯端末に入力、管理している)
(△3七角成を着手する渡辺)
図は午後5時10分ごろの局面。渡辺が3七に馬を作った。「これは▲3四歩以外だと大変ですよ。▲2四歩は△3八馬です」と藤井九段。ところがその数分後に深浦の▲2四歩が着手され、「これは大変だ」。後手は馬を作ったのは大きいが、金銀の形のひどさもある。形勢は依然として難しいまま推移しているようだ。
午後4時40分すぎ、深浦が端に桂を跳ねた。狙いは▲2五歩△同歩▲同桂。6六角のにらみがあるため、後手は3三の銀が動けない。深浦は▲1七桂を着手したのち、席を外した。
ここまでの消費時間は▲深浦2時間50分、△渡辺2時間35分。
(午後4時45分、対局室の様子。深浦が席を立つと、渡辺は体全体を盤にこころもち近づけた)
図は午後4時ごろの局面。渡辺は△6三歩と打った。渡辺はひたすら待機する方針のようだ。控え室を訪れる棋士の間からは、「後手どうするの?」「先手は千日手にはしないでしょうねえ」といった声が聞こえてくる。藤井九段は「難しいですね。先手が打開できるか、という将棋です。形勢は互角でしょう。熱戦になると思いますよ」との感想。
(「△6三歩は私が打ったら『ひどい手』と言われそうだね」、と語る滝誠一郎七段)
(「(後手は)動かす駒がないねえ」。伊藤能五段)
(寡黙に盤面を見つめる広瀬章人五段)
図は深浦が6七の金を7七に寄った局面。先手は8筋で一歩を手にするなど、徐々に局面がほぐれてきたようだ。
(「後手の模様が悪すぎますね」と話すのは片上大輔六段)
(控え室を訪れた森けい二九段)
(モニタを見ながら▲1七桂の是非について語る阿部健治郎四段(左)、藤井猛九段(右)の両人)
午後3時すぎ、深浦が6六に角を据えた。直接的には飛車を攻めつつ、後手の玉頭をにらみ自陣を手厚くしてもいる。盤面全体に影響を与えるような自陣角だ。後手の対応としては、次の三つが考えられる。(1)△3三銀と戻る。手損だが、角を手放させたことに満足する。(2)△3三桂と活用する。角を温存しつつ、駒の活用を目指す欲張った指し方。(3)△3三角と合わせる。▲同角成と取ってくれば、そこで再び△同銀と△同桂の二択に。
(午後3時すぎの対局室。写真ではわからないが、深浦は左右に、渡辺は前後に身体を揺らしていた)
図は午後3時ごろの局面。3三の銀を4二に引いた局面だ。時間は経つが、局面はなかなか動かない。渡辺としては、この銀を活用するのが最優先のテーマになる。この後△5四歩~△5三銀と守備に活用するのか、△3三桂と攻めを見据えて駒全体を活用するのか、どちらもありそうだ。控え室を訪れた宮田敦史五段は、「私は先手を持って指してみたいです」と感想を述べる。理由について尋ねると、「はあ、こっち(後手)をあまり指さないので。形勢に開きがあるからとか、そういうことではないと思います」という答えが返ってきた。
(境内の植物にはしっとりと雨露が降りかかっている)