終局直後のコメント
【勝った藤井聡太棋聖】
――渡辺名人の先手番で相掛かりになりました。2月に指された朝日杯将棋オープン戦準決勝をなぞるような展開になりましたが、お互いに想定だったのでしょうか。
藤井 途中まで同じ進行でした。△8二香に▲1六飛(37手目)で違う展開になったんですけど、▲1六飛も難解というか難しいのかなと思っていました。
――46手目に△8三銀とぶつけて飛車をさばきにいきました。その辺りはいかがでしたか。
藤井 △8三歩と受けると▲1二飛成と成り込まれる展開で、飛車の働きに差がついてしまいますので。駒損になりますが、飛車の働きを重視する必要があるのかなと思っていました。
――57手目▲8三香に対して△3四歩と角道を開けました。40分の考慮でした。
藤井 △8二歩と受けると▲7五銀から局面が落ち着いたときに飛車の働きが弱く、△8三歩型になってしまうと先手玉に迫る形がないのかなと。△3四歩だと飛車を取られる展開にはかなり進みやすいのですが、そのときどうなのかわからなくて。2二角が使えていないので、それがさばけるのも主張にはなるので難しいのかなと。
――△8八歩(60手目)が強い手だと感じましたが?
藤井 △8二歩と受けると▲7五銀で、先ほど(1つ前の回答)と単に△8二歩と受けたのとあまり怖さの違いがないのかと思ったので。△8八歩は成立するかどうか際どいのかなと思ったのですが、展開としてはそうやってやっていく手もあるのかなと。
――終盤はどのあたりで行けると思いましたか。
藤井 △3三桂(66手目)に▲5三桂成とされてから、こちらの玉がかなり危険な形が続いていたんですが、△4五桂と跳ねてそれが解消されたので、少し抜け出せたのかなと思いました。
――初防衛戦で先勝しました。お気持ちはいかがでしょうか。
藤井 自分としては防衛戦ということを意識せずに、昨年と同じように臨みたいと思っていましたけど。今日に関してはそういった自然体の気持ちで指すことができたのかなと思います。
――次局に向けて。
藤井 2局面以降は先後が決まっているので、しっかりいい内容にできるよう準備していきたいと思います。
【敗れた渡辺明名人】
――2月の朝日杯準決勝を意識されて研究されてきたと思いますが、そのあたりはいかがでしょうか。
渡辺 途中までは予定でやっていました。
――どのあたりで想定と外れたのでしょうか。
渡辺 午後に入ってからですけど、長考したところで間違えてしまった感じがします。考えていた手自体はそのあとです。
――▲8一香成(61手目)は1時間23分の大長考でした。
渡辺 先のことを考えていたのと、若干別の手も考えていたのですが、時間を使った割にはいい手が指せなかったですね。
――△8八歩(60手目)は考えていなかったんでしょうか。
渡辺 そうですね。考えていなかったです。
――一局を振り返って。
渡辺 長考したところがポイントだと思います。まずい変化になってしまって、一気にダメになってしまったのは残念でした。
――第2局に向けて。
渡辺 もうちょっといい内容の将棋を指せるように、やっていかないといけないなと思います。
(琵琶)