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2018年7月17日 (火)

記者会見

感想戦のあとに、豊島将之新棋聖の記者会見が開かれました。
第89期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負は、豊島将之八段が羽生善治棋聖を3勝2敗で破って、初タイトルの棋聖獲得という結果になりました。
すでに第90期の一次予選が始まっています。豊島棋聖に誰が挑戦するか、引き続き注目いただけたらと思います。本日は観戦ありがとうございました。 (銀杏)

20180717_kaiken (花束贈呈)

20180717_kaiken1 (記者会見に臨む)

20180717_kaiken2

20180717_kaiken3(質問に一つ一つ考えながら丁寧に答えていた)

―――初タイトルおめでとうございます。感想をあらためてお聞かせいただけたらと思います。

豊島「20歳のときに初めてタイトル挑戦して、そのあと8年近くかかったので結構長かったですけど、まだ終わったばかりで実感はないですが、あきらめずにやってよかったなと思います」

―――タイトル戦は5回目の挑戦でした。いろんな思いやプレッシャーがあったかと思います。どのような思いが支えていたのでしょうか。

豊島「プレッシャーはありましたが、自分のできることをやって、全力を出し切ることを集中しようと思っていました。
でも、初タイトルがこういうことも多少考えていましたけど、自分のできることに集中したいと思っていました」

―――師匠の桐山清澄九段も棋聖を3期取られています。

豊島「師匠とは、奨励会に入る少し前から8年くらい月1回くらいで教わっていました。師匠が取ったことのあるもの同じタイトルなのは、何かの縁かなと思います」

―――終わったばかりですが、何をしたいですか。

豊島「師匠と、子どものころお世話になった指導棋士の土井春左右先生、あと母親に会見後に連絡したいと思っています」

―――棋聖を獲得されました。次の目標はいかがでしょうか。

豊島「王位戦も挑戦中なので、まずはそれを。第1局はいいところなく負けてしまったので、巻き返せるように。相当頑張らないと厳しいだろうと思っているので集中したいです。ほかの対局も重要な対局がたくさんあるので頑張りたい」

―――島九段にうかがいます。豊島新棋聖が誕生で戦国時代となりました。お考えをお聞かせください。

島九段「豊島さんおめでとうございます。過去に例のない八大タイトルをわける戦国時代ですが、豊島さんはもっと早く取れてもおかしくなかったと思います。
羽生さんとのすごい五番勝負で名勝負した。これからも豊島さんと異なる世代、同世代のライバルと競い合って伸びていかれるのではないかと思います。意義深い五番勝負だったと思います」

―――関西では糸谷哲郎八段、菅井竜也王位とタイトルを取っている棋士がいます。焦りはなかったでしょうか。

豊島「初めはそういう気持ちもあったが、だんだんとそういうのもなくなって、自分ができることに集中したいと思っていました。そもそもタイトルを取れるのか、取れないままで終わってしまうのではという気持ちもあったので、あまり人のことは考えずに、自分のことに集中する感じにだんだんと変わってきました」

―――谷川浩司九段は「豊島さんは一人で研究していくこと大変なことだ」と感想をおっしゃっていました。ご自身ではどう感じていましたか。

豊島「特に信念があったわけでなく、試しに自分一人でやめてみたらどうなるかを思って始めて、わりと自分に合っていると思うので続けています」

―――タイトルホルダーとして、どのようにしていきたいと思いますか。

豊島「これまでは勝ち負けにこだわって指してきたので、もう少し先になると思いますが、内容的にもう少し自由な感じで指せたら、もっといいかなと思います」

―――若手棋士が台頭してきていると思うが、どう感じていますか。

豊島「自分より若い方でも、強い方が出てきていると感じます」

―――若手棋士の台頭について、どういう理由や要因があると考えますか。

豊島「少しずつ、将棋が新しくなってきていると思います。将棋ソフトの影響もありますし、新しい指し方が出てきて、これまでの経験が生きる形もありますが、そうでない形がたくさんあるので、若い方が活躍されているのかなと思っています」

―――いままでの型にとらわれず指したり、研究されたりしている印象でしょうか。

「そうですね」

―――タイトルを取れるか不安になったといいう話もありました。心が折れかけたこともあったかと思いますが、ここまで棋力を挙げてこられた原動力は何でしょうか。

豊島「子どものころから好きで始めた将棋なので、純粋に楽しいということがあります。でも、そう思えない時期もありましたが、周りの方や応援してくださる方がいて、頑張ろうと思っている自分がありました」

―――つらかったというのは、いつごろのことでしょうか。

豊島「そうですね、25歳あたりからいままでくらいですかね」

―――戦国時代という話がありましたが、王位戦でタイトルを取れば、早くもタイトル保持数で優位に立つ可能性があります。意気込みをお聞かせください。

豊島「ただ、王位戦は第1局でいいところなく負けてしまったので、相当頑張らない厳しいと思っています。初タイトルを取りましたが、気持ちを引き締めて頑張りたいと思います」

―――羽生竜王の1強時代を崩すような象徴的な勝利だったと思いますが、藤井聡太七段など若い世代が出てきています。

豊島「羽生先生とはこれまで何度も指していて、今回もかなり厳しい戦いになると思って挑みました。藤井七段は現状でも相当強いですし、伸びしろがかなりあると思うので、これから戦っていくのは大変なるだろうと思いますけど、自分にできることをやっていくしかありません。藤井さんはさらに強くなるでしょうから、今後難しい戦いになると思いますが、タイトル戦に出続けられるようにならないと頑張らないといけないと思っています」

―――将棋を始めたのは4歳のころに羽生先生の映ったテレビを見た縁もありましたし、4年前の王座戦五番勝負での名勝負では敗れました。そうした中で羽生先生を乗り越えた感慨をお聞かせください。

豊島「1回勝つことができましたけど、やはり自分の中に課題もたくさんありました。中終盤で粘り強く指されて、自分にミスが出たことが多かったです。ですので、はっきり勝てた感じはありません。王座戦や前の棋聖戦は、はじめの段階で悪くなって敗れることが多かったです。今回はそういう展開ではなくなったので、自分でも少し成長したのかなと思います。ただ、課題の残るシリーズだったと思います」

―――これまで負けたこともあるが、羽生竜王との対戦でのタイトル獲得をどう感じているか、ようやくタイトルをとれた。意気込みで違う部分があるのか、やってみて手ごたえが違うのかお聞かせください。

豊島「羽生先生は将棋を始める前からずっとトップ棋士で指されています。そういう活躍を見てきているので、対局できること自体が信じられない気持ちを持ちながら対局している感じです。羽生先生に勝ってタイトルを取れたのは、なんというか現実ではないような気持ちもあります。
これまでのタイトル戦との違いは、これまで肩に力が入りすぎていてよくなかったと思ったのでそうならないようにしようと思いました。実際は、やはり結構力が入っていたかなと思います。内容的には序中盤は割とうまく指せたかなと思います。これまでは悪くなってしまうことが多かったので、それが違いかなと思います。

―――対局中に誤って警報が流れてしまいました。1回退室されました。どのあたりまでいかれたのでしょうか。

豊島「びっくりして外に出ましたが、退室したくらいです。廊下に出たところで、職員の方だったか、ホテルの方だったか忘れてしまいましたが、予行演習のようなものと聞きました。対局中だったのでびっくりしました」

―――王将戦から充実していると思いますが、実感はありますか。好調の秘訣について心当たりはありますか。

豊島「少しずつ棋力が上がってきていると思います。今年はタイトル戦で3回挑戦できて、これまでなかったので、力がついていると思います。王将戦のタイトル戦とA級順位戦のプレーオフが終わったあとで、気持ちが折れることなく、高いモチベーションで続けられたのがよかったと思います」

―――8タイトルを8人でわけあっています。豊島棋聖はどういう風に考えていますか。

豊島「強い方が多く出ていると思う。上のレベルで割りと力が拮抗しているのかなと思います。A級順位戦でも6-4で6人プレーオフになりました」

―――羽生世代といわれる世代の棋士がタイトルを持ち合う時期が続きました。近年に20代の棋士がタイトルを取るようになりました。力が上がって追いついてきた実感はお持ちでしょうか。

豊島「自分もそうですし、同世代も20代後半になってからも少しずつ力が伸びてきているかなと思います。ただ、羽生先生と同じ世代の方と指すと、経験の差を感じることもあります」

―――力がついたことと戦術の変化が関係あるのでしょうか。

「そういうところもあるかと思います。これまでと違う価値観が出てきています。そういう影響もあるかと思います」

20180717_toyoshima10 (フォトセッションの様子)

20180717_toyoshima11 (色紙は感想戦後に揮毫したもの)

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