(インタビューに答える永瀬六段)
―――今日の一局を振り返っていかがでしたか。
永瀬「全体的に難しい将棋だったと思いますが、気づいたら悪くしてしまいました。中盤でもう少し頑張る手があったかもしれませんが、わからずに粘る将棋になってしまいました」
―――40手目に△8六歩と攻めた当たりはいかがでしたか。
永瀬「変化が多すぎて、どれを読んでいけばいいかわからなかったです」
―――66手目△2五飛のあたりで△3四桂と大駒を取りに行くのはいかがでしたか。
永瀬「△3四桂では少し形勢が悪い気がしたので、複雑化できればと思っていました」
―――少し押され気味だという意識があったのですか?
永瀬「そうですね。その後に△4三角と引くのは仕方ないです。78手目に△9三同飛としたのは、飛車を成っていくのでは自信がありませんでした。このあたりは粘りに切り替えていました」
―――どのあたりで優勢から勝ちになったと思いましたか。
永瀬「最後の変化は読みきれていなかった気がします。勝ちになったと思った瞬間はなかったと思います」
―――88手目△4二歩で△4二香はいかがでしたか。
「▲8四飛でどうかと思っていました」
―――100手目△4三桂が好手といわれていました。
永瀬「△4三桂でもまだ自信はなかったですが、盛り返したかなと思いました」
―――五番勝負は2勝1敗になりました。初タイトルにあと1勝となりました。意気込みを。
永瀬「意気込みというものはありませんが、一生懸命頑張りたいと思います」
―――今日を振り返っていかがでしたか。
羽生「飛車を圧迫されてつまらない将棋になりました」
―――中盤は先手が指せるという評判でした。
羽生「よくわかりませんでした。いろいろあって。何かあったかもしれませんが、読みきれませんでした」
―――93手目▲9三歩から▲9二角成としました。このあたりはどうでしたか。
羽生「あのあたりは何が正しいかわかりませんでした。ただ、△4三桂(100手目)と跳ねられてみると、悪かったかもしれないですね」
―――1勝2敗で追い込まれてしまいました。
羽生「また、変わらずに次も頑張りたいと思います」
(銀杏)
第3局は永瀬六段が勝ち、2勝1敗とリードしました。終局時刻は19時26分。消費時間は▲羽生3時間59分、△永瀬3時間57分。
図は113手目▲5三桂不成の局面。100手目△4三桂が好手で逆転しているとみられています。
▲5三桂不成は△3一玉に▲5六馬のつもりですが、△6七角成▲同馬△5五桂打と6七を攻めるのが厳しいようです。
(銀杏)
図は98手目△6六香の局面。羽生棋聖は香の裏を突いて▲6五桂と跳ねました。△同角なら▲7三歩成で王手角取りです。
ところが△4三桂と跳ねられてみると、後手玉が広くなって、寄せるのが容易ではありません。
終盤戦で技の掛け合い。どちらが勝ちか、控室ではわかっていません。
(銀杏)
図は90手目△3三歩まで。先手は銀得の上に遊び駒がありません。局面の流れは変わり、永瀬六段が粘る番です。▲5二銀成△同玉▲6五桂が検討されていましたが、羽生棋聖は11分使って▲6五角。永瀬六段はすぐに△5一桂と駒を使います。
(銀杏)
第1図は中盤の38手目△3六歩の局面。後手が技を狙っていそうなところで▲9六歩。悠然と構えます。
しばらくたった第2図。やはり、後手が攻めを狙っていそうなところで▲9四歩。以下、第3図まで進んで、先手は桂得の戦果を挙げました。間合いを見誤るとすぐにガタガタになるところですが、羽生棋聖はうまく応じました。遅いようで間に合った先手の攻めでした。
(銀杏)