前夜祭 明日の見どころ
(両対局者が会場をあとにし、ステージでは井上九段が司会を務め明日の見どころが語られた。ステージには左から井上九段、大内九段、飯田六段、伊藤能六段)
井上「今回は先ほどの飯田先生に代わって、私が戦型予想の司会を務めます」
大内「私には分かりません。羽生さんが先手なので先攻するだろうと思います。豊島さんに攻めさせるとうるさい。戦型の内容は分かりません」
(師匠である大内九段の隣でマイクを握る飯田六段)
飯田「コンピュータ的に解析しますと、豊島さんに風が吹くのではと。というのは先ほども触れましたが、羽生さんはマリオン・ティンズリーのような境地ではないかと思うんですよね。勝負を超えて、将棋の神髄を探求する境地に達しつつある。それを垣間見える実力を豊島さんが持っている。結局決着着かない熱戦になりますが、最後は若さがものをいうのではというのがコンピュータの解析です。ほとんど差がないということです」
伊藤「明日は羽生先生の先手です。普通は相居飛車で横歩取りや矢倉、角換わりでしょうけど、昨年の王座戦で羽生さんは豊島さんの中飛車に敗れた将棋がありました。今回はのみ市での対局で、逆手に取るという意味で、みの囲いにするんじゃないか。羽生さんが逆手を取って中飛車にするのではとひそかに期待しています」
井上「中飛車と言えば大内先生」
大内「でも、現代の中飛車と私の中飛車は全然考え方が違います。われわれのころはがっぷりしていましたが、いまは隙あらば切るという感じです。現在の中飛車は居飛車穴熊にさせないということで、考えが違うのです。後ろ向いたら切られる感じです」
飯田「結局、コンピュータ的には、特定の得意な戦法を持つ人は長い期間トップにいられないんです。それはゲーム理論のナッシュが証明していまして、オールラウンドプレーヤーなのが大事。その点で、羽生さんや豊島さんはトップ棋士だなと感じます。その日の空気によって自然に決まるのではないかと思います。明日にならないと分からないということです」
井上「オールラウンドプレーヤーでもあるし、ブレが少ない感じを受けます」
飯田「お二人の棋風は隙がないですよね。隙の無い戦型で、特定されないように変えられる強さが特徴と思います。その二人が相対したときにどうするか。風上に立たないといけません。どういう戦型を選ぶのかが興味深いです」
井上「伊藤さんも観戦記担当として、どういう将棋を期待したいですか」
伊藤「観戦記担当としては、熱戦になってほしい。ただ、あまり持将棋模様には…。120手から30手くらいの書きやすい将棋になってほしいですね」
井上「大内先生が最近思われていることはありますか」
大内「子どもがね、育成しないといけないと予算をとって、全国展開しました。JT杯というのがありますよね。子ども大会が本対局の前に行われますが、 どこも1000人以上来ます。親も含めると2000人以上来るんです。いますごい勢いで子どもが伸びています。 羽生豊島のあとを追って私もプロになりたいと思う子が増えてレベルが上がると思います」
(書き起こし・銀杏、写真・吟)