読みの入った手
中村六段は1時間4分の長考で▲7四歩(図)と利かした。△8二角と引かせて△8二歩を消す狙いと思われる。△8二角▲5七金△7二銀と進んだときが気になるが、それには▲7三歩成の成り捨てがピッタリで、先手の角は取られない。ただ、この手自体は角の移動範囲を狭くする手なので、感覚的に指しにくい手だ。先の長考は、読みの裏付けをとるための時間だったのだろう。この手を見て羽生棋聖が手を止めている。「次が▲5七金の一手ではないかもしれないので、自分ならとりあえず△8二角と指してみたいです」と豊島七段。相手の指し手を見てから考える、というわけだ。時間の使い方も十人十色である。
(朝、対局室で盤側に座る豊島七段)
(文)