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2010年6月 8日 (火)

【梅田望夫観戦記】 (6) 昼食休憩時: 井上慶太の局面の考え方

梅田: 今の局面(▲2二歩の局面)の考え方を、できるだけ初心者にもわかるように教えてください。

井上: まあ、角換わり先後同型の戦型から、先手が攻めて後手が受けるという流れだったんですけど、▲2二歩の局面では、後手の考え方として、もう受けきって勝つというよりかは、攻め合いで勝つという流れです。後手としては玉を飛車の方向(7筋8筋)へ逃げてくると、6三金とかの現在離れている金や銀が応援に働いて、厚みのある、手厚いところに逃げ込めるので、△同金ととって、▲3三銀と使わせて、△4一玉と早逃げするのか(中田新手)、それともいきなりすぐに△4二玉と逃げるのか。その選択ですね。

梅田: 「受けきって勝つより攻めあいで勝つ流れ」とおっしゃった意味は、7筋8筋に逃げていくのは攻め合いのスピードを遅くさせるという意味であって、それで受けきれるわけではない、逃げてもいずれつかまる、でもそのスピードを遅らせて、その間に攻めなきゃいけない、という意味ですか。

井上: そうですね。ただ、後手の攻め方というのもですね、△4九馬から△5八馬というのが一般の、普通の……馬を活用しながら先手陣の守り駒を攻めるんですけどね。その手順の中で△7六歩、▲同銀、△7七歩とか、先手陣を歩の突き捨てなどの手筋で乱すのが、どれだけ効果的か。先手が歩切れなので、羽生さん(先手)にあんまり歩を渡したくないところもありますし。歩によっての先手陣のかく乱などの組み合わせが、難しいと思いますね。歩を渡すと、先手からの新しい攻め筋もできてしまう。たとえば▲7四歩とかが、この局面でしたら先手から攻め筋があります。歩を渡すとね、そのへんが非常に難しいと思いますね。

梅田: このあたりでの一手の選択というのは、もう、詰みまで読まなければならないということですか。

井上: 矢倉とかでしたらね、ちょっと一手甘い手があっても、なんとなく先は長いんですよね。ある種の大局観で指せるというか。でもこの将棋の場合は、大局観というより、読みですね。計算の世界です。必死かけて、詰むか詰まへんかという局面になりやすいですよね。

梅田: 角換わりの将棋はそういう性格ということですか。

井上: この同型は、特にそうなりやすいですね。

梅田: 終盤の計算に自信のある人がこの戦型を選ぶんですね。

井上: 谷川さんなんかその代表じゃないですかね。谷川先生だったらどうですかねえ。まあ先手のほうが好きそうですけどね。

梅田: ここ数ヶ月、角換わり同型の後手が苦しいんじゃないかというコンセンサスがあったようですね。

井上: そうですね、2月の渡辺佐藤戦ですかね、それまではずっと同型の将棋を指されてましたけど、それ以来、渡辺さんもやめてますよね。そういう話もあったので、先手がこの局面は指せるのかな、というふうに皆、感じていたのではないでしょうか。

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