【梅田望夫最終局観戦記】 (5) x-dayは果たしていつ?
朝からの両者のあまりにも早い指し手に促されて、怒涛のように(2)から(4)までの更新をした。
そして午前11時、対局室の中に再び入った。そこでやっと落ち着いて(2)から(4)までで書いたことを振り返る余裕を持ちながら、未踏領域の将棋をこんこんと考えふける二人の姿を眺めていた。
「コンピュータに不向きな将棋」が人間対人間(羽生木村)の戦いで選択されたとはいえ、正直なところ、トッププロとコンピュータの差がここまではっきりした形であらわれるとは、私は思っていなかった。
木村さんの▲8四歩にノータイムで羽生さんが△8二歩と指し、木村さんが▲6六馬と指したところまで観て、控え室に戻った。そして、私がそんなコンピュータ将棋と人間の差についての感想を口にしたら、
「終盤は間違えませんよ。第四局の木村さんの終盤での大ポカみたいなことはコンピュータには絶対にありません。」と勝又さんは言う。
「でも、トッププロとの戦いで終盤になる前に大差になってしまえば、終盤の力をコンピュータが発揮することができないという展開になるのではないですか。x-dayは、相当先なんじゃありませんか」
と私が問うと、「そうなるといいんですけどねえ」と勝又さんは答えた。
金子さんからは、こんなメッセージが入ってきた。
『48手目8二歩打の局面です。 67 ▲8三歩成△同歩▲7五歩△6四歩▲5五馬△4四角▲同馬△同歩▲7四歩△同銀▲8二角△6一飛▲9一角成△5四角▲5六飛△7六歩』
この手順に対する勝又さんの評価は、「こういう決戦策に出てしまうと、壁銀である2八銀が悪さをする展開になって、先手は勝てないと思います」だった。
また、木村さんは49手目に▲8三歩成ではなく▲6六馬を指したわけだが、その局面については、
『49手目 6六馬の後の局面です -235 △4一金▲6八銀△6四銀▲8三歩成△同歩▲8二歩△7三桂▲7五歩△8四歩▲7四歩△8五桂▲同桂△7四飛▲7七銀他に△4二金上や△6四銀と迷ってました。』
と金子さんから連絡があった。羽生さんはここで△2一玉と指したのだが、コンピュータの△4一金について、勝又さんはこう言う。
「△2一玉のほうが△4一金よりも囲いの資産価値が高い、ということは、プロ棋士は経験でわかっているわけですね。囲いのリフォームの技術をだいぶコンピュータも習得したと思ったけれど、ここで△4一金と指すようでは、まだまだですね。△2一玉で、金と玉が離れましたね。金と玉の連絡関係をコンピュータは重視するので、△2一玉と指せなかった。でもこの将棋だと、先手が2筋で歩を打ってしまっていて▲2三歩が打てませんから、△2一玉から囲う形がいいんですね。」
金子さんは、
「GPS将棋には何を指して良いのか分からないのかもしれません。最近ようやく昔ながらの横歩取りの後手番で4一玉と寄れるようになったGPS将棋にはとても難しい将棋になってしまいました。」
との感想を寄せてくださった。