カテゴリ「第24期竜王戦七番勝負第4局」の記事 Feed

2011年11月24日 (木)

20111124_51図は12時15分頃の局面。丸山九段は再度6筋に飛車を寄った。次に▲6六歩△同歩▲同飛の歩交換があるので、それを防ぐ△6二飛が自然。しかしそこで▲5六銀と出た局面は、46手目(下図)の局面と比べると手番を後手に渡した格好になっている。後手は6筋から飛車を動かせないので、何か別の手を指さなければならない。すると後手の形が崩れるというわけだ。「非常に高度な手順です」と、Twitter解説の稲葉五段。

この局面で12時30分になり、昼食休憩に入った。再開は13時30分より。
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対局地になっている穴原温泉は、奥州三名湯のひとつ飯坂温泉のすぐ北に位置していることから、「奥飯坂」とも呼ばれる。吉川屋は摺上川と片倉山に面し、秋にはきれいな紅葉が見られる。西を見れば、吾妻連峰の色づいた山々。また車で1時間ほどのところには紅葉の名所「磐梯吾妻スカイライン」が通っている。磐梯吾妻スカイラインは昭和34年開通、平均標高1350メートルのパノラマコース。吾妻八景をはじめとした絶景が広がっている。残念ながら、現在は冬期通行止。周囲の景色をを見ると、抜けるような青空とのコントラストが鮮やかだ。日差しは穏やかでいい天気……と言いたくなるが、パラパラと冷たい雨が降っている。渓谷ならではの天気、といったところだろうか。

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20111124_47_2外では風が吹き、色づいた木の葉が太陽の光で輝きながら舞っている。パラパラと天気雨が降り、控え室の外、すぐ近くに虹ができた。局面は互いに玉を囲い終え、攻めの形を探る段階に入っている。丸山九段は、6筋にあった飛車をひとつ右、5筋に動かした。解説の稲葉五段は、「初めて見ました。これはすごい手ですね」と驚く。この形では、互いに「戦いになったときに自分だけがいい形でありたい」という思惑がはたらく。その結果、飛車のポジションを変えるパス合戦になることが多い。
11時、渡辺竜王が△9二飛を着手。後手はスキのない陣形で待ち、仕掛けがなければ成功というスタンスだ。局面打開の義務は先手にある。島九段は「駒はぶつかってないけど、もう戦っている感じがしますね」と話した。

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控え室では、広瀬七段が地元の小学生に指導対局を行っている。対局しているのは佐藤陽香(はるか)さん。手合いは二枚落ちで、佐藤さんは二歩突っ切り定跡で上手陣を攻略しようとしていた。

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20111124_34_2開始から早いペースで指し手が進み、戦型は角換わり腰掛け銀に。第2局でも現れた形だ。相居飛車のうち序盤で角交換する形を、特に「角換わり」と呼んで区別している。ちなみに第1局第3局も角換わりになったが、こちらは「一手損角換わり」と呼ばれる似て非なる戦型。この(一手損角換わりと通常の角換わりの)関係について、勝又清和六段は「パラレルワールド」とうまく表現している。一手損角換わりが流行したことで、本局のような通常の角換わりが「ゼロ手損」と呼ばれることもある。

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(10時前の控え室。島九段、観戦記担当の鈴木宏彦さん、広瀬七段が継ぎ盤を囲んでいる)

定刻の9時。立会人の島九段が「丸山挑戦者の先手でお願いします」と告げ、二人が一礼。対局が始まった。丸山九段が初手を着手すると、カメラのフラッシュが一斉に瞬いた。

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対局室「芙蓉」のある場所は9階。廊下の窓からは色づいた山々を望むことができる。目を凝らすと、パラパラと何かが降っている。どうやら天気雨のようだ。対局室の中では、関係者が対局者の到着を待っていた。盤のわきへ目をやると、丸山九段の席にはミネラルウォーター3本とお菓子が置かれていた。関係者の一人が、窓の外を指さしてこそっと言う。「すごい虹が出てますよ」。山の稜線をなぞるように、見事なアーチがかかっていた。

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