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2009年7月17日 (金)

慎重な羽生棋聖

Kisei2009071776

△6五桂を41分の長考の末に決断した羽生棋聖。優勢な局面で慎重に時間を使っていると控え室。検討では△6五桂のほかに、△8九飛もあげられていた。

(吟)

【梅田望夫最終局観戦記】 (8) その気持ちをなくしてしまったら、きっと坂道を転げ落ちる

 「これは検討通りに、一直線に行ってしまうかもしれないねえ」

 という棋士たちの声を背に、午後3時に対局場に入った。木村さんが32分の長考の末、検討通りの▲7三歩成を指したところだった。消費時間は、両者ほぼ130分ずつと均衡している。まだまだ時間はたっぷり残っている。

 木村さんは傍目にもちょっとつらそうに見える。やはり生身の人間だから、表情やしぐさやときおり発する声で、その感じが盤側にいてもわかる。対局者同士は、傍で想像する以上に、相手がどう考えているかを感じ合いながら、戦っているのだろう。

 『羽生名人は1時間4分考えて▲2三歩と垂らしてきた。この長考中は本当に苦しい時間だった。▲2三歩でも▲5二金でも私が悪そうで、光は全く見えない。こんな時は平静を装うだけでも疲れる。羽生名人が席を外す度に私は大きくため息をついたり、頭を抱えたりしていた。控室や大盤解説場のモニターには映っているが対戦相手にだけはこんな姿を見せてはいけない。』

 昨日、羽田から松山に向かう飛行機の中で、渡辺竜王から届いたばかりの新著「永世竜王への軌跡」を読んでいたら、竜王戦第七局の熱闘を振り返って渡辺さんは、こんなことを書いていた(p230)。

 永世竜王を賭けた渡辺羽生の竜王戦最終局の終盤で、自らの非勢を意識しているときの描写である。木村さんの胸中も、こんな感じなのかもしれない。

 控室では羽生勝勢という声も聞こえる。

 いま木村さんは、74手目△5六角に対しての手を考えている。でも、きっとまだまだ頑張るだろう。

 私がこの棋聖戦の観戦記を書くために、木村さんの過去の言葉を調べていていちばん感動したのが、彼の腹の底から絞り出されたような、こんな言葉だったからだ。

 『負けと知りつつ、目を覆うような手を指して頑張ることは結構辛く、抵抗がある。でも、その気持ちをなくしてしまったら、きっと坂道を転げ落ちるかのように、転落していくんだろう。』(将棋世界2007年5月号)

 

控え室では後手勝勢の評判

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検討を行う、立会人の屋敷九段とネット解説担当の三浦八段。

Kisei2009071772
羽生棋聖が△7四角と打った局面。ここから▲7二馬△5六角と飛車を取り合って、▲5六同歩に△6五桂で後手勝勢との控え室の評判。先手は壁形がひどく、2筋に後手だけ歩が利くのが大きい。

(吟)

15時のおやつ

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羽生棋聖のおやつ
和菓子(水ようかんとわらび餅)と抹茶

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木村八段のおやつ
和菓子(水ようかんとわらび餅)とホットコーヒー

控え室にもすいかとエクレアが届きました。ありがとうございます。

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(吟)

【梅田望夫最終局観戦記】 (7) 意表のコンピュータの指し手を控え室で検討。おっ、その手を羽生が指した!

 「この手にどう指すんですかねえ」

 屋敷さんが笑いながら、

 「これ、しびれてますかねえ」と言う。

 この手とは、GPS将棋がしきりに読み筋として指摘していた△4五桂を、ここで指してみたらどうかということである。いまは67手目▲9一桂成に羽生さんが長考しているさなか。

 △4五桂について、控え室の棋士たちの直感は、3三の桂はそのままにして、後手は右辺の駒をさばいていくべき、という棋士の感覚に、コンピュータの感覚はちょっと違う、と言うのだ。

 しかし、屋敷さんと勝又さんが68手目△4五桂を真剣に検討したところ、「いやあ△4五桂で、玉頭がめちゃめちゃ厳しいじゃないですか。コンピュータならではの先入観のない発想が良かったかもしれない」という話になった。

 そこで羽生さんの手がモニター上にあらわれ、指したのが果たして△4五桂であった。控え室で歓声が上がった。

 「羽生さんは、先入観がないからなあ」とは勝又さん。「コンピュータが、この△4五桂を読み筋に入れているだけで、褒めなくちゃいけない」。

 しかし一応厳密にいえば、67手目▲9一桂成の時点でのGPS将棋が一つ最終的に選んだ指し手は、

 『△8二飛▲8三歩△7二飛▲7八金△3一金寄▲8一桂△6五角▲3六飛△2三歩▲8二桂△7四飛▲同馬△同角▲7一飛△7三歩▲7二桂』

 であった。勝又さんによれば、△8二飛はいい手じゃないけど、間違いなく△4五桂は読んでいたはずで、それは高く評価しなければいけないとのことだ。

 そして、68手目△4五桂の局面におけるGPS将棋の手順提示は、

 『▲7三歩成△同銀▲8三馬△7四角▲7二馬△5六角▲同歩△6五桂▲6六角△7七桂成▲3六香△5七金▲同角△同桂成▲同玉△5九飛』

 であった。検討中の三浦さんが声をあげた。

 「ここで検討している手順と全く同じだよ。▲7三歩成△同銀▲8三馬△7四角▲7二馬△5六角▲同歩△6五桂までは、いま屋敷さんと並べている手順そのままですよ!」

 「これは飛車を見捨てる(角損の)寄せなんですよ。本当に終盤になると、おそろしく強いんだよ」とは、勝又さん。「こんな順が読めるんなら、強いよね」

 「68手目△4五桂で、明らかに後手良しです」とは屋敷さん。

 

控え室では

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控え室では、立会人の屋敷九段と副立会人の勝又六段が検討中。

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67手目▲9一桂成に対して、控え室では△4四角▲6八銀△6五銀▲9六飛を検討している。飛車の逃げ場所は9六が良いようだが・・・・。後手持ちとの評判が多い。

(吟)

宝荘ホテル(3)

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ロビーに飾られている正岡子規像

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夏目漱石像も飾られてある。

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神輿(まどんな神輿)までロビーに。

(吟)

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