終局直後
――午前中の流れについて。
藤井 △3三角(16手目)のあたりからそれほど経験のない形で、どういう駒組みがいいか一手一手、手探りという感じで指していました。
――▲7五歩(37手目)について。
藤井 序盤はずっと手が広いと思っていました。▲7五歩と突かれて8一桂をスムーズに活用するのが難しくなったので、交換した1歩を生かして手を作っていけるかどうか、という感じになりました。
――△4三銀(40手目)について。
藤井 △5四角みたいな筋を狙おうかなと思ったのですが、普通に△3一玉(42手目)から△5四銀と前に出すような感じで指すのも自然かなと思ったので、どういう指し方がよいか、あのあたりでは難しいかなと思いました。
――午後の戦いはいかがでしたか。
藤井 △3五歩(44手目)から動いていくのはあまり本意ではありませんでしたけど、具体的にどういう指し方がいいのかわからなかったので進めてみた、というところでした。その後、斬り合いになって判断の難しい局面になったかなと思います。
――第1局全体について。
藤井 組み上がりのあたりは、後手番としてはそれほど不満はないと思いましたが、実際にどう動いていくかと考えてみると難しかったので、そのあたりの判断は課題だったかなと思います。
――第2局に向けて。
藤井 まずはいいスタートを切れたと思います。第2局以降は先後も決まっていますので、しっかりと準備をしたいと思います。
山崎 先手番なんですけど、後手番っぽい駒組みになっているので、私のほうを持ちたいという人はいないだろうなと思って指していました。午前中は息の長い戦いになるのかなと思って、その長い戦いのなかでどう面白い駒組みにするかな、みたいなことは考えていたんですけど。先手番なので▲7五歩(37手目)は欲張ってみたんですけど、△4三銀(40手目)と引かれてみて対応が……。その後も突っ張ったからには、何か突っ張った手を指さないといけなかったんですけど、後手後手を引いてしまって、ペースを握られたまま押し切られてしまったかなという感じです。
――▲7五歩について。
山崎 ▲7五歩は進めるうちに(思いついた)という形ですね。突かなければ普通の右玉っぽい形になるので、突いたあとにいろいろやってみたい形があって、盛り上がって面白く指していきたいなと思って。それが△4三銀で一瞬で破綻してしまいました。
――▲2四飛(65手目)のあたりは。
山崎 あれは、すっぽ抜けてしまいました。ちょっとうっかりがあって。藤井棋聖が相手なので、ちょっと踏み込まないといけないかなと。
――うっかりとは具体的に。
山崎 △5九銀不成から△5四角で受けがないという(補足=たとえば66手目△4八銀不成に▲3四飛は△5九銀不成▲7七玉△5四角が厳しい)、単純なことなんですけど。ちょっとお恥ずかしながら、はい。それなら、もうちょっと辛抱する指し方を選ばないといけなかったんですけど、普段より踏み込まないと勝ち目がないかなと思ったので。
――第1局全体について。
山崎 先手番をもらって先手番の得を生かせないのは、いつものことなんですけど。構想力が問われるような将棋というか、息の長い戦いにしようとして、ちょっと欲張った手を指したんですけど、藤井棋聖の対応された手に対して、もうちょっとこう……。▲7五歩と指したからには、受けずにカウンター狙いで意欲的に指していかなければいけなかったかなと思います。そちらのほうがまだいい勝負ができたんじゃないかなという思いはあります。予定と違うような戦いになったところで弱気になってしまったのは、挑戦者としてよくなかったと思います。
――15年ぶりのタイトル戦でした。
山崎 普段と違う空間で、より引き締まる思いで将棋を指せるのは幸せなことだと思いました。これで内容がもう少し競れば、より気持ちの上で楽しいんだろうなと思いながら……。いい場所で指させてもらえているな、という感覚はありました。
――第2局に向けて。
山崎 次は後手番ということで、かなり厳しい状況ではあるんですけども、自分のベストをもっと出しきって、もっといい将棋を指したいなという気持ちです。