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2023年7月 2日 (日)

前夜祭(4)

対局者が退出後、関係棋士が対局の見どころや戦型予想を話しました。
Dsc_6579 (左から青野照市九段、勝又清和七段、八代弥七段、青嶋未来六段、藤井奈々女流初段、行方尚史九段)

Dsc_6604 (立会人コンビの青野九段と勝又七段)
青野九段「藤井さんが八冠を目指すうえでしなければならないのは、棋聖戦と王位戦での防衛、それから王座戦での挑戦権獲得、とりあえずはこの三つですね。元名人や元竜王が皆、藤井さんにやられてしまう中で、今回の佐々木さんは順位戦ではC級2組と、いちばん下のクラスです。ただ、見ている側にとって、彼がいちばんやれるんじゃないかという期待を抱かせる棋士でもあります。それは師匠の深浦さん(康市九段)と同じで、簡単には負けない棋風ということもありますし、これまで藤井さんと戦って散々な目に遭った人たちとはちょっと違うんですよね。プロ入りが同年のライバルがちょっと先にいっちゃったなという感じで。棋士は同期の人間には負けたくないという気持ちが非常に強いですし、楽しみな挑戦者が出てきたという気がします」

勝又七段「データ的なことをお話ししますと、藤井棋聖と佐々木七段は結構似ているところがあります。まず、二人ともアマチュア時代に倉敷王将戦全国大会の低学年の部で優勝しているんですね。プロになってからは、藤井棋聖だけでなく佐々木七段も最多勝利賞や最多対局賞といった賞を取っています。ただ、キャリアには随分と差があるんですけど、これは佐々木七段本人も明かしている理由がありまして、藤井棋聖が小学4年生で奨励会に入ったのに対して、佐々木七段の奨励会入りは中学1年生なんですね。それは心臓に難病を抱えていて、それを克服するのに時間がかかったからなんです。それで、プロを目指すために長崎の対馬から家族全員で横浜に引っ越してきたと。師匠の深浦康市九段から伺ったんですが、彼に初めて会ったときは、治療のために体中に管を巻いていたそうです。それから運命の出会いのように師弟になって、盤外の人格は素晴らしいけど、盤上ではこれほど嫌な棋士はいないといわれるほどの、深浦九段譲りの粘り強さを身につけました。皆さんも第2局の逆転勝ちをご覧になったかと思います。どんなに非勢でも諦めないという深浦イズムを師匠から学んでいます。いまは七段と七冠王ということでキャリアに違いはありますが、もしこの棋聖戦、それから王位戦で佐々木七段が勝てば、一気に佐々木大地が将棋界のスーパースターになると思います。もちろん、そうはさせないと藤井棋聖も頑張るでしょう。とにかく、明日の戦いは皆さん注目してご覧ください」

Dsc_6714 (大盤解説を担当する八代七段と青嶋六段は、ともに静岡県出身)

八代七段「第1局は角換わり、第2局は相掛かりで、それぞれ先手が勝利を収めています。明日の第3局はここまでの流れ通り、先手の藤井棋聖が角換わりを志向すると予想します」

青嶋六段「先手の藤井棋聖は、得意の角換わりを目指されるのではないでしょうか。ただ、佐々木七段の第3局に向けての抱負では、この将棋に懸けるという熱い思いを感じたので、何か秘策を用意しているのではとも思っています」

Dsc_6753 (藤井女流初段と行方九段)

行方九段「戦型は9割方、角換わりだと思いますが、個人的には、藤井さんの久々の初手▲7六歩からの矢倉を見てみたいです」

(書き起こし=睡蓮、写真=銀杏)

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