堅さ対バランス
渡辺名人の持久戦志向に永瀬王座が歩調を合わせ、じっくりした展開になりました。永瀬王座の△2四歩(48手目)は弱点を突くだけにぎょっとしますが、次に△2三金と上がって補強する用意で、その有効性が知られつつあります。実戦は▲8八玉△2三金▲6九銀△3二玉▲6八銀上と進みました。
金銀4枚の囲いは以前の矢倉ではよく見られましたが、近年では珍しくなりました。さらに▲9八香~▲9九玉と穴熊に組み替えて堅さを追求する順があり、バランスよく構えている後手とは対照的です。平成の目では玉が堅いほど実戦的に勝ちやすいのですが、令和では玉の薄さを読みの力でカバーし、攻撃に戦力を回す考え方が主流になりました。本局は挑戦権争いだけでなく、時代によって移り変わってきた思想の戦いでもあります。
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