前夜祭(2)
両対局者入場後、関係者からのあいさつがありました。
(浦上雅史・淡路島棋聖戦実行委員会委員長)
「豊島棋聖におかれましては、この一年間で一挙に三冠を獲得され、将棋界の頂点に立たれました。一方、渡辺二冠におかれましては、永世竜王、永世棋王の資格を持っておられ、タイトル獲得通算22期のベテランでございます。現在、タイトルをこのように複数持っておられるのは、おふたりだけでございます。この度のおふたりの対決は将棋界の頂上戦と言っても過言ではないかと存じます。さて、私ども洲本ライオンズクラブと棋聖戦のご縁でございますが、いまから24年前、阪神淡路大震災で淡路島は大きな被害を受けました。そこで何とか淡路島に元気を取り戻そうと、地域の活性化と青少年の健全育成を目的とし、洲本ライオンズクラブが棋聖戦と取り組むことになったのがきっかけです。淡路島では震災の翌年からホテルニューアワジを棋聖戦の会場として始められ、今日に至っております。豊島棋聖、渡辺二冠におかれましては、対局を控え、お疲れのことと存じますが、お時間の許す限り、ご歓談いただけたらと存じます」
(竹内通弘・洲本市長)
「経緯に関しては先ほど浦上委員長が述べられましたので、私としましては、阪神淡路大震災の復興を期して、実行委員会の皆さま、産経新聞社さま、日本将棋連盟の方々のお陰で、この洲本市での棋聖戦が開催されますことを、心より感謝申し上げたいと思います。豊島棋聖、渡辺二冠は、今もっとも勢いのあるおふたりでございますので、この洲本市の棋聖戦第1局でどのような戦いをされるか興味深く、素晴らしい戦いをしていただけると思っております。明日は大変な対局を控えておりますが、淡路島の美味しい食材を食べていただき、洲本温泉にゆっくり浸かって鋭気を回復していただいて、明日の淡路島の棋聖戦が有意義なよい一日になることを願っております」
(安東義隆・産経新聞大阪本社編集局長)
「ご承知のように時代は平成から令和に代わり、今回は令和最初の棋聖戦ということで、またその記念すべき開演にふさわしい対局になると確信しております。豊島棋聖は若手の棋士の中では、いつタイトルを獲ってもおかしくないと言われていた実力の持ち主で、昨年、念願の初タイトルを獲得されました。対する渡辺二冠は、加藤一二三九段、谷川浩司九段、羽生善治九段に続く4人目の中学生棋士で華々しくデビューされまして、その後の活躍は皆さんご承知のとおり。永世竜王、永世棋王の資格を持ち、前年度の成績は勝率8割ということで、非常に勢いに乗っている方です。まさに頂上決戦という名にふさわしい対局になると思っております」
(脇謙二・日本将棋連盟常務理事)
「私事ではありますが、この淡路島は私の祖父母の出身地でございまして、子どもの頃はよくこちらにも参りました。素晴らしい前夜祭を催していただきまして大変感謝しております。先ほどから紹介がありましたように、絶好調の豊島棋聖に対し、絶好調の渡辺二冠が挑むという図式。この棋聖戦の結果次第では、タイトルの数が変動するかもしれません。そういう意味でも第一人者の地位をかけた戦いになると思います。将棋の内容的にも居飛車党の本格派同士、互いの深い研究がうかがえる対局になるのではないでしょうか」
(書き起こし=夏芽記者、撮影=武蔵)
(武蔵)