前夜祭 乾杯
大内
「明日の第2局で立会人を務める大内です。ここ辰口温泉は金沢と小松の間にこの場所があるわけですが、私は金沢と縁がありまして、数年前に亡くなられた人間国宝の徳田八十吉先生と親交が厚かったんです。徳田先生は石川県支部連合会の会長を務められました。無類の将棋好きだったんです。石川で徳田八十吉といえば英雄中の英雄ですね。 露骨な言い方をしますが、徳田先生は1年間に将棋で最低でも1千万使っていました。というのは、将棋大会に自分の作品を商品にドンドン出していたんですね。これ、焼き物の世界からすると困るんですね。巨匠が簡単に出してしまうと、希少価値が下がってしまいますからね。でも、先生はお構いなしで、ファンが喜ぶなら私の作品を差し上げましょうと。北陸三県の将棋界の発展に大きく盛り上げてくださいました。 先ほど、泉鏡花の話が出ましたが、私は神楽坂に住んでいまして、泉鏡花と神楽坂も縁が深いんですね。金沢で生まれて、尾崎紅葉の門弟として神楽坂に来るんですね。神楽坂で小説を書きました。神楽坂に住んでいる作家の嵐山光三郎さんがよく金沢に来られていて、その人の音頭で、泉鏡花と親交を深くしようというのが神楽坂で盛り上がっていて、絶えず交流が行われています。そういうご縁もあるんだなと感じています」