【梅田望夫観戦記】 (3) 後手深浦の二手目は△8四歩だった! 角換わり同型へ。
本日は米長会長の発案で、記録係ではなく産経新聞社住田社長による振り駒が行われた。
五枚の歩が宙を舞い、白い絹布の上に歩が4枚、と金が1枚が出た。羽生先手が決定。固唾を飲んで最初の数手を待ったが、まず先手羽生棋聖は順当な▲7六歩。私は深浦挑戦者の手が飛車先にのびたとき、私は心の中で「あっ」と叫んだ。先ほどアップしたばかりの「二手目△8四歩問題」そのものの局面があらわれたからだ。
そして羽生は当然という顔で「あなたの角換わり同型の研究を受けてたちますよ」とばかりに▲2六歩。もう深浦は時間をあまり使わず、すらすらと角換わり同型の定跡手順へと向かい、羽生もそれについていく。
午前9時23分時点ですでに19手が進んでいる。
深浦は棋聖戦挑戦者になった直後のインタビューで、
「羽生さんは一日制の強さが際立っています。私は一日制のタイトル戦は初めてなので、思い切ってやってみたいです」
と答え、挑戦者に決まった直後に届いた私宛のメールでも
「羽生さんの1日制の強さをゆっくり考えてみます。」
とあった。深浦の今日のテーマは、羽生が圧倒的に強い一日制将棋に対する作戦として、「腰掛け銀同型での新発見、あるいは同型以外での角換わり対策」を引っ提げ、かなり長手数にわたる定跡手順をあまり考えずに指して時間をセーブすることで、一気に二日制将棋の二日目のような状況に持っていこうとしているのではないか。
「変わりゆく現代将棋」に収録された羽生との対談は、昨年の11月、竜王戦第三局、角換わり同型で一日目で終盤近いところまで進んだ将棋の二日目の夕方に行われた。
羽生はその将棋を見ながら、
「そうですねえ。最近はタイトル戦でも終盤の70手目、80手目まで前例のある将棋とかがありますよね。もし、ああいった将棋が増えてくるならば、それは2日制というルールとマッチしているのかな、と思うことはあります。逆に持ち時間を短くして7番勝負じゃなくて、15番勝負くらいでやるのも、面白いんじゃないか、ということをちょっと思ったりなんかはします。」
と語った。ここはゲラ校正段階で一般化のために少し手が入ったところで、当日の羽生は、竜王戦第三局・角換わり同型の将棋(今日のこの将棋)の話をしていたのである。
羽生としては、深浦の注文通りに、定跡手順を素早く指して、角換わり同型の最新研究の戦いに持ち時間の大半を投入するつもりであろう。
午前9時41分段階で34手目まで定跡手順で進んでいる。
この将棋、じつは今日のチャット解説の飯塚七段が、6月1日に対中田宏樹八段戦(棋王戦)で、飯塚先手でこの将棋を指している。今日のチャット解説に大いに期待したいと思う。