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図は渡辺が6三の金を引いた局面。先手が6五の位を取った手に対して、じっと引く。佐藤天五段が再び控え室を訪れ、盤面を見て「まだ序盤ですねえ」と一言。
(午後2時すぎの対局室。両者とも飲み物を口にしているようだ)
(文)
図は渡辺が6四にいた金を引いた局面。6筋で小さな折衝があったが、このまま戦いに突入するわけではない。「戦いを起こしたくないんですね、後手は」と語るのは田中寅彦九段。「(3三の銀を指して)この普天間基地が問題ですね」。5六の銀に比べて3三の銀は働きが弱いが、先手の出方を見て使い方を決める含みはある。じりじりと、お互いに間合いを計る展開が続いている。
(「鳩山総理ならどうするかな」と、時事問題になぞらえる田中九段)
(将棋会館の向かいにある鳩森八幡神社。雨は弱まり、小糠雨になった)
午後1時となり、対局再開。渡辺は少考ののち△8四歩を着手した。
(対局室から見る新宿方面、雨に煙るビル群)
休憩前の消費時間は▲深浦56分、△渡辺58分。
12時10分、図の局面で昼食休憩に入った。深浦が7五の位を取った局面だ。先手は玉頭方面でポイントを上げにきている。後手はこの位に対し反発していくのか、それとも手薄になるであろう盤面右半分、すなわち飛車方面から動いていくのか。後手番なので自分からは動かず、じっと待機する作戦も考えられる。いずれにせよ、戦いが起こるのはしばらく先になりそうだ。
対局再開は午後1時より。
図は午前11時40分ごろの局面。棋譜を取りに対局室へ入ると、深浦は正座で背筋をピンと伸ばし、腕を組んで盤面を見つめている。いっぽうの渡辺はあぐらになり、扇子でハタハタと顔に風を送っていた。空気に漂う緊張は緩く、本格的な戦いはまだ先、といった雰囲気が感じられた。
27手目までの消費時間は、▲深浦42分、△渡辺26分。昼食の出前注文は、渡辺が「ギンダラ定食」、深浦が「うな重(竹)、肝吸」だった。
(カメラによる対局室の様子。午前11時45分)
控え室を訪れたのは、佐藤天彦五段。現在別室で千葉幸生五段と対局中(棋王戦予選)である。置かれた盤を見て「どちらがどちらですか?」と尋ねる。記者が「飛車を振っている方が竜王です」と答えると、「私とは金と銀が違いますね。私の金は3三にいるんですよ」とポツリ。そちらの盤面の方も気になる。
(佐藤五段が見ていた盤面。写真奥が渡辺陣)
(この銀が金になっている、ということは……阪田流向かい飛車?)
(朝、土砂降りだった雨は弱まり、今はしとしとと降っている)
図は午前11時ごろの局面。お互いに玉形の整備を進めている。先手は矢倉、後手は美濃囲い。盤面の右半分を見ると、2筋では互いの飛車先が均衡を保っている。この形では、後手から飛車交換を挑む手段がある(具体的には△4四銀~△3三桂~△2五歩)。先手は飛車交換を挑まれても困らないように考えながら、駒組みを進める必要がありそうだ。
21手目までの消費時間は▲深浦29分、△渡辺18分。
対局開始から20分ほど経った頃、渡辺が飛車を横に動かした。居飛車党の渡辺が飛車を振るのは珍しい。といっても同様の実戦例がないわけではなく、実際に今期の棋聖戦本戦準決勝▲稲葉△渡辺戦でも、渡辺は「ゴキゲン中飛車」を選択している。
図の△4二飛は「四間飛車」の位置。戦法としては「角交換型振り飛車」に分類され、新しいタイプの振り飛車とされる。従来の振り飛車は角道を止めて戦う戦法で、「振り飛車には角交換を狙え」という格言があったほど。ゆえに角を交換したうえで飛車を振る、という本局のような形は「新しい」のである。
(振り駒の結果、と金が三枚出て深浦の先手に。記録係は杉本和陽三段)