第32期女流王位戦挑戦者決定戦

2021年3月 2日 (火)

第32期女流王位戦五番勝負 日程

第1局 4月27日(火)兵庫県姫路市「夢乃井」
第2局 5月18日(火)北海道札幌市「京王プラザホテル札幌」
第3局 6月2日(水)福岡県飯塚市「旧伊藤伝右衛門邸」
第4局 6月8日(火)徳島県徳島市「徳島市立徳島城博物館」
第5局 日にちは未定 東京都渋谷区「東京・将棋会館」

本局の中継は以上で終了です。ご観戦ありがとうございました。

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(睡蓮)

山根女流二段インタビュー

感想戦後、山根女流二段は報道各社による共同インタビューに応じました。

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――改めまして、挑戦権を獲得されての率直な気持ちを教えてください。

山根 初めて挑戦者になれたことは、すごくうれしく思っています。

――挑戦者決定戦進出も今回が初めてでした。今日は普段通りに対局できましたか。

山根 そうですね。そんなに緊張せずに、いつも通りの気持ちで臨めました。

――1週間前の甲斐智美女流五段とのリーグ最終局、そして本局と、どちらも入玉含みの難しい戦いでした。2局を振り返っていただけますか。

山根 どちらも熱戦でした。ただ、本局は中盤からまったく自信がなくて。どこで逆転したのかは、本当に分かりません。いつもは心が折れてしまうことがあるんですけど、本局は「もう少し粘ろう」と頑張れたのがよかったのかなと思います。

――そういう前向きな気持ちが、17連勝につながったのかと思います。ご自身では好調の理由はどのように考えていらっしゃいますか。

山根 コロナ禍で研究会やVSがなくなったり、オンラインになったりして、対面で将棋を指せる機会が公式戦だけだったので、一局一局を楽しみながら、伸び伸び指せたのがよかったのかなと思います。

――五番勝負への意気込みを聞かせてください。

山根 里見さんとはいままでに2局対戦があって、どちらもあまりよくない内容で負けてしまいました。今回は絶対に3局は指せるので、将棋の内容をよくできるように準備をして、成長できる番勝負にしたいです。

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――リーグ最終局の甲斐女流五段との対局で連勝が止まってしまいましたが、引きずることなく本局に望めたと終局後のインタビューでおっしゃっていました。

山根 そうですね。連勝が止まったことは、そこまで気にしていませんでした。17連勝まで積み重ねることができるとは思っていなかったので、望外な結果だと。リーグの最終局は勝っても負けても挑戦者決定戦に出られることが決まっていたんですけど、そういうことは意識せずに、一局を楽しめました。

――里見女流王位については、どのような印象を持っていますか。

山根 私が女流棋士になる前からトップにいらっしゃって、ずっと目標にしていた方です。厚い受け将棋で、攻める棋風の私とはまったく違うかなと思っています。過去に対戦した2局は、攻めを切らされる形で負けてしまいました。

――五番勝負では、兵庫、北海道、福岡、徳島と、全国を転戦することになります。どこか楽しみにしているところはありますか。

山根 全部楽しみです。今回は、北海道はどこですか。

――札幌です。

山根 札幌はすごく好きなので、うれしいです。

――番勝負ではご自身の将棋のこういうところを見てほしいということはありますか。

山根 私らしい将棋で番勝負に臨みたいです。引き続きよろしくお願いします。

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――今日の将棋について教えてください。(125手目▲4一飛成で)先手の二枚竜が実現した辺りはどのように見られていましたか。

山根 全然、自信がなかったです。ただ、馬で桂香を取って、駒の損得はなくなったのと、入玉も目指せそうな形になったので、まだ粘れるかなと。もう少し前は、もっと自信がありませんでした。

――終盤は、伊藤女流三段が得意の入玉を目指す展開になりました。そこはまずい展開にしてしまったといった気持ちはありましたか。

山根 そうですね。入玉がうまい方ですから。全力で阻止しようと思っていたんですけど、かなり上にこられてしまうような形になっていたので。相入玉も選択肢としてはあったんですけど、秒読みの中で駒数の計算がすぐにできなかったので、攻めようと思いました。

――心が折れてしまうことがあると、先ほどおっしゃっていました。本局や最近の活躍の中ではそういうことがなくなってきているのは、技術的な変化ですか、精神的な変化ですか。

山根 精神的な面かなと思います。コロナ禍になってから、一局一局のありがたみを感じて、大事に指そうという思いが強まったので、そこが大きいのかなと。

――今年度の活躍は、コロナ禍の状況を力に変えたといってよいですか。

山根 コロナ禍になって、勉強の場がなくなったり、外に出られなかったりと、マイナス面も多かったんですけど、その中でストレスをためずに生活することができたのが大きかったと思います。

――二強(里見香奈女流四冠、西山朋佳女流三冠)がタイトルを独占しているいまの女流棋界でタイトル戦初登場の挑戦者が現れたことは、女流棋界全体にとっても意義のあることだと思います。そういう中でタイトルに挑戦することについては、どう感じていますか。

山根 かなり厚い壁だとは思うんですけど、まずは自分が成長することがいちばんなので、トップのお二人に少しでも近づけるように精進したいです。

――地元の愛媛県・松山の皆さんも、今日の対局を見守っていたと思います。そういうファンの皆さんに対して、一言お願いします。

山根 愛媛に帰ることもなかなかできていないので、その分、地元の皆さんにいい報告ができればと思っていました。今回、一歩前進できたことはすごくうれしく思います。

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――今日の対局でいちばんつらかった局面はどの辺りでしたか。

山根 ▲5六飛(77手目)のところは後手の駒が押さえ込まれるような形になっていたので、まったく自信がなかったです。

――苦しい中で粘りの手が指せたというのは、どの辺りのことでしょうか。

山根 △5二歩(80手目)辺りですかね。悪くなると攻めていって、もっと悪くしてしまうということが多かったので。

――女流棋界では「終盤は山根に聞け」という言葉もあるそうですけれども、今日も一分将棋の中で難しい終盤を乗り切って勝たれました。ご自身の終盤力についてはどのように思われていますか。また、最近は振り飛車だけでなく雁木系の将棋も指して、変化を志向されている様子がうかがえます。なぜそのような選択をされているのですか。

山根 終盤については、自分ではまったく強いとは思っていないんですけど、序盤がへたで悪くなることが多いので、勝つときは逆転勝ちになります。それで終盤が強いということになっているのかなと思います。そこは直したい部分でもあるので、最近は序盤の研究に力を入れています。

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――タイトル挑戦という結果を出すまで、いろいろな努力をされてきたと思います。タイトル戦に出るというイメージは以前から持っていましたか。上位に勝ち残ってくるようになる中で、手応えはどのように変わってきましたか。

山根 前までだったら、挑戦者決定戦まで進めれば自分の中では満足というか、実力以上の結果だと思っていました。挑戦者になるという目標を達成できて、タイトルも見えてきたので、対局が終わったばかりであまり実感はないんですけど、五番勝負はしっかり準備をして臨みたいです。

――タイトル戦となると、和服を着るかどうかなど、服装についても気になってくると思いますが。いまは何かイメージはありますか。

山根 和服を着るというのは憧れですね。小学生時代から、清水さん(清水市代女流七段)たちが和服で対局する姿を見て格好いいなと思っていたので。女流王位戦は服装の規定はあるんですか。

――ご自身がいちばん指しやすい格好で結構です。

山根 和服……憧れはありますけど、慣れてはいないので、要検討かなと思います。

(睡蓮)

感想戦

感想戦は20分弱で、18時45分に終了しました。

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(睡蓮)

終局直後

Dsc_78311 (終局直後の対局室)

Dsc_78391 (主催者のインタビューに応じる)

Dsc_78531 (初のタイトル挑戦を決めた山根女流二段)

◆山根女流二段の談話

――本局を振り返ってください。

山根 中盤は自信がなかったです。金(7三金)が変な位置にいてこちらの玉が堅くなく、攻められる展開になってしまいましたので。

――手応えを感じたのはどの辺りでしょうか。

山根 最後まで分かりませんでしたが、金を取るところ(178手目△2五銀)で勝ちを意識しました。

――今期は予選からの出場です。本局までで印象に残る場面がありましたら、教えてください。

山根 そうですね……。王位リーグの最終局、甲斐さん(甲斐智美女流五段)との対局が二転三転の激しい内容で……。そこで連勝が止まったこともあって印象に残っていますが、それからうまく気持ちを切り替えられたかなと思います。

――これで挑戦権獲得となりました。相手は里見香奈女流王位で、五番勝負の長丁場です。

山根 挑戦権を獲得できたことは、とてもうれしく思います。4時間の持ち時間の将棋は指したことがないので、とても楽しみです。里見さんとの五番勝負も準備をして臨みたいと思います。

Dsc_78571 (敗れた伊藤女流三段)

◆伊藤女流三段の談話

――本局を振り返って、いかがですか。

伊藤 優勢だと思って指していたのですが、自玉への手の入れ方がおかしかったですね。悪手を一杯、指したと思います。

――どこかに誤算がありましたか。

伊藤 (153手目からの)▲1六玉△3六銀成のところで思わしい受けがなかったのが誤算でした。本譜△3五成銀(156手目)まで進むと、駒を取られすぎなので。それまでに何かあったとは思うのですが。

(睡蓮)

山根女流二段が挑戦者に

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図の局面までで山根女流二段の勝ちとなりました。終局時刻は18時21分。消費時間は、▲伊藤女流三段2時間56分、△山根女流二段2時間59分。

勝った山根女流二段は里見香奈女流王位への挑戦権を獲得。自身初の五番勝負登場が決まりました。五番勝負は4月27日(火)に兵庫県姫路市「夢乃井」で開幕します。

山根女流二段が勝勢に

20210302o18時5分を過ぎました。山根女流二段の攻めがはっきりつながり、局面は後手勝勢になっています。タイトル初挑戦が見えてきました。

Dsc_78111 (山根女流二段。伊藤女流三段の粘りを振りきれるか)

(睡蓮)

捕まるかどうか

20210302n図は17時50分過ぎの局面です。△1三歩に1分使って、山根女流二段は一分将棋に入りました。伊藤女流三段は残り13分。入玉を目指す先手玉を後手が捕まえきれるかどうかが焦点になっています。

Dsc_77571 (入玉は伊藤女流三段の十八番。しかし、局面自体は先手がやや苦しそうだ)

(睡蓮)

山根女流二段が切り込む

20210302m図は17時30分過ぎの局面。山根女流二段が△3五桂とタダの桂を打ち、相手玉を寄せにいっています。以下は▲3五同銀△3六銀▲3七金打が予想される進行ですが、そこで後手によい継続の順があるかどうか。勝敗の帰趨はまだまだ見えません。

Dsc_78141 (山根女流二段。寄せの力を発揮できるか)

(睡蓮)

先は長いか

20210302l図は17時5分過ぎの局面。激戦が続いています。手数は130手に達しました。先手の竜2枚が大きそうではありますが、5一桂・6一金のブロックがしっかりしており、後手玉に直接迫るにはまだ少し時間がかかるかもしれません。

Dsc_78021 (山根女流二段。残り時間は10分を切っている)

(睡蓮)

終盤戦

20210302k図は16時35分頃の局面。互いに残り時間が少なくなってきているためか、早いペースで手が進み、終盤戦の入り口といってよさそうな状況になっています。ともに玉形は安定しているとはいい難い格好で、小さなミスも大きく響いてきそうです。

Dsc_78181 (伊藤女流三段。▲2二飛の王手がどこまで厳しいか)

Dsc_78091 (山根女流二段。ひとまずはしっかり受けたうえで、反撃の機会を逃さないようにしたい)

(睡蓮)

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