―― 序盤の▲6七角(29手目)について。
清水 角を手放すので決断だったんですけど、こちらだけ1歩持てるので。その後もよくなったのではないかと。
―― どの辺りで勝ちを意識しましたか?
清水 ▲7四角(79手目)ですね。
―― 最後はどうでしたか。勝ちを確信した局面は。
清水 わからなくなってしまって。▲7四角で勝ちを意識はしたんですが、だんだんそれがぼやけてきてしまいました。
―― 一局を振り返っていかがでしたか。
甲斐 ▲6七角で動きを牽制されていたので、攻めの糸口がなかなかつかめなくって。△3一金(62手目)の受けがとがめられてしまったので……。全体的に中盤で差をつけられたかな、と。
―― 具体的にどこがまずかったでしょうか。
甲斐 すぐ端を突いた(△9五歩=110手目)ので、銀が打てるようになった(▲8八銀=111手目)というのはあるんですが、その局面はよくわからなかったです。
(文)
図の▲5三角で甲斐が投了。清水が今シリーズ初勝利を上げた。
図は18時55分頃の局面。△8五歩、甲斐女流王位が先手玉に迫っている。控室ではここで▲6一金△8六歩▲8四竜!が決め手で、先手の勝ちと言われている。そう進んだ局面は先手玉は詰まず、後手玉は必至。「ただ、ここで金寄る(▲7六金寄)とあやしいかもしれません」と誰かの声。ほどなく、清水女流六段は慌てた手つきで図から▲7六金寄を着手。以下△6二飛▲同馬△7八銀と進み、ついに先手玉にも詰めろがかかった。果たして逆転しているのか。盤上に不穏な空気が漂ってきた。
■棋譜解説チャット(片上大輔六段)
「次に△8八金以下の詰めろです。盛り上がってきました。盛り上がる……だけなのかどうか? ▲8八歩で残しているような気がしますが、秒読みでは何が起こるか分かりません」
(文)
図は16時35分頃の局面。△5六馬と引いた局面だ。3四竜と3八銀の両取りになっている。また、自玉頭の守りにも利かせている。馬が動けば△5八飛成が王手になる仕組みだ。先手玉に嫌味をつけつつ、粘って容易に決め手を与えない。甲斐女流王位の底力が見える一手だ。これが逆転への希望となるか。
■棋譜解説チャット(片上大輔六段)
「△5六馬に竜を逃げれば△3八馬です。馬が動くと△5八飛成が生じます。形勢の差は縮まっていませんが、甲斐さん本当に粘り強く指しています。素晴らしい追いこみです。30手前にぼんやり打った角が、後手玉の守護神として活躍しています」
(先ほどまで吹いていた風がぴたりと止み、邸内は静まり返っている)
(文)